東芝は、亜酸化銅を用いた太陽電池の透明化に成功した。短波長光を吸収して発電し、長波長光を約80%透過する。同電池は地球上に豊富に存在する銅の酸化物を用いることから、低コスト化でき、素材として高効率な発電が期待できる。
東芝は2019年1月21日、亜酸化銅(Cu2O)を用いた太陽電池の透明化に成功したと発表した。性質の異なる太陽電池を重ねて太陽光の吸収波長域を拡大し、全体の発電効率を上げるタンデム型太陽電池の開発に寄与する。
透過型Cu2O太陽電池は、短波長光を吸収して発電し、長波長光を約80%透過する。同電池をトップセルに用いて、現在広く使われている結晶シリコン(Si)太陽電池をボトムセルに使用すれば、短波長から長波長までの光をエネルギーに変換できる。これにより、高効率なタンデム型太陽電池の開発が可能になる。
現在製品化されているタンデム型太陽電池には、市販の結晶Si太陽電池の1.5〜2倍に相当する30%台の発電効率を誇るものがあるが、製造コストが結晶Si単体の太陽電池に比べて数百倍〜数千倍と高いことが難点だ。
今回開発した透過型Cu2O太陽電池は、地球上に豊富に存在する銅の酸化物を用いることから、低コスト化でき、素材として高効率な発電が期待できる。また、発電の際に吸収する光の波長域が結晶Siとは異なるため、結晶Siの発電を阻害することがほとんどないという。
Cu2Oは、CuOやCuなどの不純物相が生成しやすく、混ざり合いやすい性質を持つため、同社では酸素量を精密に制御する独自の成膜法を適用した。Cu2O薄膜内部でのCuOやCuの発生を抑えることにより、Cu2Oの透明化に成功。この薄膜は波長が600nm以上の長波長光を約80%透過できる。
同技術を用いてプロトタイプのタンデム型太陽電池を試作・実験したところ、ボトムセルに使用した結晶Si太陽電池が、単体で発電させた場合の約8割の高出力を維持して発電することを確認した。
同社は、現在の結晶Si単体太陽電池の効率を大きく上回る30%台を目標として、3年後に透過型Cu2O太陽電池をトップセルに用いた低コストなタンデム型太陽電池の完成を目指す。
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