アルミニウムと銅のいろいろと、めっきやアルマイトのお話ママさん設計者とやさしく学ぶ「機械材料の基本と試作」(3)(1/3 ページ)

ママさん設計者と一緒に、設計実務でよく用いられる機械材料の基本と、試作の際に押さえておきたい選定ポイントと注意点を学んでいきましょう。今回は、“鉄に非(あら)ざる”、「非鉄金属」の中から、アルミニウムと銅のいろいろについてです。アルマイトとめっきの違いについても説明します。

» 2017年06月28日 10時00分 公開

 皆さん、こんにちは! Material工房・テクノフレキスの藤崎です。生活でも実務でも最も身近な金属「鉄」を擬人化して、ちょっとユニークに仕立ててみた前回の「鉄鋼特集」はいかがだったでしょうか? 自分で書いていながら「もしもうっかり不良品を作ったら、鉄子たちはリサイクルされてまた熱くて痛い思いをさせてしまうから加工には気をつけよう」などと考えてしまったのですが、そうでなくても鉱物資源は地球の恵みですから、有効に使いたいですね。

 説明の通り鉄鋼材料は実に幅広いのですが、試作の材料に鉄を用いたい場合、基本的には汎用(はんよう)材料である炭素鋼を検討します。炭素鋼を使うメリットは、加工性の良さはもちろんですが、流通量の多さと形状バリエーションの多さ、それからお値段の安さです。ただ、目的によって炭素鋼では満足に対応できない場合には、お高い合金鋼を検討することになります。

 ところでこういった材料の選定では、試作に関わる人それぞれが、てんでバラバラに目安を持っていると、調達にムダや遅れが発生します。そういうつまらないトラブルを防ぐためにやっておきたいこともおいおい書いていく予定です。

まずはアルミから

 さて、今回は“鉄に非(あら)ざる”、「非鉄金属」の中から、試作に用いられることが多いアルミニウムと銅についてざっくりお話しします。まずは、鉄に次いでよく使われるアルミニウムからです。

 誰もがよく知るアルミニウムの一番の特徴、それは「軽さ」じゃないでしょうか。その密度は「鉄と比較しておよそ1/3」と聞けば、おおよその見当がつきますよね。数値を示すと、鉄の密度が7.87(×103kg/m3)に対してアルミニウムは2.7です。それから「熱伝導率の高さ」も特徴で、鉄の80(W/(m/k))に対して237とほぼ3倍あり、とっても放熱性の高い「熱しやすく冷めやすい」金属です。比較的柔らかい性質で、加工性の良さから精密機器から鉄道車両や航空機までアルミニウムは便利に使われています。この他「磁性を帯びないこと」も特徴の1つです。軽い、だけど熱しやすく冷めやすい、しかも磁力にコビない、そして柔軟……、「何やら、したたかな……」という印象のある金属です。

 純度100%の「純アルミニウム」は、よく伸びて溶接性が良好な半面、強度が低くネバネバしていて切削性が悪いという難点があります。そのため、機械の構造部品の材料では、亜鉛やマグネシウムといった他の元素を加えて強度を高めた「アルミニウム合金」が利用されることが多いのです。これは、炭素鋼にさまざまな元素を加えた合金鋼とも似ていますね。同じようにアルミニウムでも、JIS(日本工業規格)のルールに従って加える元素を変えることで、強度や加工性、耐食性などの性質を変えた目的別のアルミニウム合金が作られているのです。

 下の表で代表的なアルミニウム合金をまとめてみたので見ていきましょう。

図1:アルミニウム合金一覧

 アルミニウム合金は、それに含まれる合金元素の種類別に、「Aluminum」の「A」を頭に付けた1000番台から8000番台までの下4桁の数字で表されたJIS記号で分類します。このうち、3000系と4000系、それと8000系は国内ではあんまり流通していないので、「こういう系統のアルミニウム合金があるんだな」程度に理解しておけばよいです。

 機械材料として最も多く使われているのが5000系の中の「A5052」です。これは言うならばアルミニウム合金界の万能選手で、加工性、耐食性、溶接性に優れ、流通量が多いので調達も容易、しかもお手頃価格で手に入るので「この部品はアルミで作ろう」と決まったら「A5052」を指定することがほとんどです。ですから、この品種はぜひ覚えておいてくださいね。

 1000系は純アルミニウムに分類されます。繰り返しになりますが、純アルミニウムは純度が高い代わりに強度が低いので、構造部品としてではなく、導電や熱交換を目的とした用途で使うことがほとんどです。

 2000系では、「ジュラルミン」と呼ばれる、硬さと強さを備えた合金が所属します。6000系は、アルミサッシに代表される「押出材」が主で、ホームセンターで手に入るアングル材やチャンネル材もこの系統になります。7000系はアルミニウム合金の中でも別格の、鉄鋼材料にも匹敵する強度を持つ高価な合金が所属します。これは熱処理を行うことで最高の強度を得ることができるように作られています。

 アルミニウムの製造方法は、鉄の製造方法に比べてやや手間がかかります。アルミニウムはイオン化傾向が大きい物質で鉄以上に酸素と結び付きやすいので、高温で溶かした程度では酸素から引き離せません。電気分解(還元)という手段を加えて酸素とお別れさせるのです。

 原料は「ボーキサイト」と呼ばれる赤茶けた鉱石で、その成分の50〜60%が酸化アルミニウム、他にはマグネシウム(Mg)、ケイ素(Si)なども含まれています。これを砕いて濃水酸化ナトリウムに漬け、加圧・加熱した後で不純物を除去して、水酸化アルミニウムの結晶を取り出し、次いで焼成して酸素を抜くことで酸化アルミニウム(アルミナ)を取り出して、これを電気分解してアルミニウムの地金を作ります。この地金を圧延したりダイスに通して押し出したりして、機械材料が出来上がります。

図2:ボーキサイトが機械材料になるまで
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