東京大学のチームメンバー、前田利基さんにお話を聞きました。
S 前田さんは法学部の3年生なんだね。いろいろお話を聞かせてください。
前田さん(以下MA):はい。まず私たちは2015年に人数不足により一度活動休止に追い込まれました。2016年に1年生を中心に活動再開し、その時は先輩の残してくれた図面をもとに一度車を作ってみるという活動をしました。2018年のマシンはその経験を生かしてコンセプトからクルマを作りました。
S そのコンセプトとは?
MA メンバーが少ない(実働6人)ので、とにかく工数削減です。いかに簡単に作れるかを追い求めました。次にEasy Drive、電子制御のCVTでシフト不要としています。エンジンユニットはビッグスクーターのスズキSKYWAVE650です。このユニットが長いのでサイドマウント、昔の形に戻りました。
S サイドマウントと言うと静岡大学が有名だけど、それ以前にやっていたんですね?
MA はい、日本で最初にやったのは東京大学です。
K 活動は順調でしたか?
MA 実は7月までフレームを作っているという状況で、夏休み入るとほぼ1カ月間大学に泊まり込みで完成までこぎつけたという急造マシンです。結果ほとんど走行テストができないままこの大会に持ち込みました。技術車検、重量、ティルト、騒音は合格したのですが、懸念事項であったブレーキテストに合格できず、2018年も動的審査に進めませんでした。
S ブレーキの問題は絶対的な制動力不足なの?
MA そうですね。マスターシリンダーの容量の設計ミスですね。
S だって、車体が重そうだもの。
MA はい、289kgありまして、今大会のICV(内燃機関車)の最重量マシンです(笑)、エンジンユニットだけで90kgあるので。
S そのユニットを支えるフレームだから、当然重くなり、それを止るためのブレーキの容量が足りなかったことですね。
MA はい。でも、今後の活動のベースマシンができたと考えています。2018年新たに取り組んだのはリアサスペンションです。ドディオン式のリジッドなのですが、多分日本の大会では唯一だと思いますし、このコースレイアウトならリジッドで全く問題がないと思っています。海外では結構見るのですけどね。
K なぜ日本の大会では今までになかったのでしょう?
MA よく分からないのですが、「レーシングカー=ダブルウィッシュボーン」という固定概念ではないでしょうか?そういう流れに一石を投じてみたいという思いもあります。
K スタートし直しのチームだから、いろいろなことにチャレンジできるということでしょうか?
MA 失うものは何もないので、だったら新しいことにチャレンジしようかなと。
S ところで、「東大、しかも法学部に入ったのに、何で泊まり込みでクルマなんか作ってるんだ?」って親御さんに言われないの?
MA 「何やってんだ!?」って言われますよ(笑)
S でも絶対これからの人生の糧になるよね。
K そうですよ! 旋盤加工やフライス盤加工ができる東大生ですよ。しかも文系。素晴らしじゃないですか!
リスタートから2年目の活動は動的審査に行けなかったという結果に終わりましたが、現実と理想のギャップを埋めるのが「改善活動」。東京大学の2019年のさらなるステップアップに期待しようではありませんか!
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