今大会からEV(電気自動車)に転向した豊橋技術大学。リーダーの望月雄斗さんにお話をお聞きしました。
K なぜ今回からEVに転向したのですか?
望月さん(以下MO) 私たちのチームは日本一、世界一速いマシンを作ることを目指しています。今現在、海外の大会では当たり前のようにEVが勝っています。海外に負けないためにもEV転向は必須だと思っています。
K 名古屋大学が「勝つためのEV」と、2017年からEVに転向しましたが、その影響はありますか?
MO 私たちも長いことこの活動をやっているので、以前からEVの話は出ていました。2018年はEVをやりたいという声が多かったことが大きいです。
S ボディーは伝統のフルカーボンモノコックですね。
MO はい、今回はステアリングホイールとシートもカーボン化しました。
K EVにしたことで設計などの進め方が変わったのではないですか? 苦労した点、良かった点などがあったらお聞かせください。
MO 私たちはみんなクルマ好きで、学部も機械系なので全く電気科のメンバーがいないんです。パワートレイン担当のメンバーは独学や、電気系のスポンサーさんにアドバイスしてもらって設計を進め、知識ほとんどゼロの状態から頑張ってくれました。あと、使用したモーターですが、日産リーフやホンダNSXのものを使えばスポンサードしていただけるのですが、軽いマシンを作るために小さなモーターとバッテリーが使いたい。そこでアメリカのZEROモータースのモーターサイクル用を使うことにしたのですが、それを購入するために例年よりさらに多くの資金集めが必要になりました。その結果、2017年のICVのときは245kgあったのですが、2018年のEVマシンは207kgで、EV最軽量賞は間違いのないところです(取材時点の情報。その後、実際に受賞していました)。
S それはすごい軽量化ですね! 普通はEVにすると重くなるはず。それが40kg近く軽くなるとは!
MO はい、2018年はそこに拘りました。
S 相変わらずカーボンボディーが美しいですね!
MO ありがとうございます。2018年から美しさを狙って2コート目にブルークリアで塗装しています。光が当たるとブルーが浮き出るんです(望月さん、ここでボディーにLEDライトを当てる)。
K わぁ! きれい! こんな天気で残念ですね……。
MO そうですね。太陽の下では本当にきれいなんですよ。速いだけではなく、美しいマシン作りをしたいんです。
K 2018年のマシンの見どころを教えてください。
(ここで設計担当メンバーさん登場:以下D) う〜ん、見どころ……、あ、配線! EVになると配線は増えるし、レインテスト(雨中でも漏電しないことを確認するためのテスト)もあるので、極力配線は外に出さずに、美しくまとめています。
MO スタッフの方も当校がEVだということが浸透していなくて、ICV向けの車検場に行くように促されたりしました。あと、大きなリアウイングも軽量化のために廃止して、その代わりにパワーユニット周りをカウルで覆いました。それでより車体がコンパクトに見えるのだと思います。
S (車体後方に回って)あ、これはすごい。本当にコンパクトだ。これじゃICVかEVかはちょっと見だと分からないですね。「サイレンサーがないからEVだな」って感じです。最近のF1でも用いられているシャークフィンもカッコイイ!
K 審査結果はどうですか?
MO 静的審査は例年弱いのですが、2018年は全ての審査で得点が上がっています。動的審査はアクセラレーションではパワーが足りなかったですが、スキッドパッド、オートクロスでは予想通りの成績を収めることが出来ました。総合成績はEVで2位か3位になると思いますが、全体ではまだ満足のいくものではないと思っています。
D 2018年はEV1年目です。今回の結果をもとにブラッシュアップを図り、ICVに勝つようなマシンに仕上げていきます!
K、S どうもありがとうございました。
美しいカーボンのマシンはEVになっても美しかったです。総合結果はEV部門3位、総合25位でしたが、豊橋技術科学大学は間違いなく上位に食い込んでくるでしょう。「速いマシンは美しい!」
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