神奈川県立産業技術総合研究所は、血液や尿から、がんの診断マーカーとなる特定のマイクロRNAを簡単に検知する技術を開発した。血液や尿を98℃で2分間加熱処理した後に反応液と混合し、検査チップに滴下してマイクロRNAの有無を診断できる。
神奈川県立産業技術総合研究所は2018年10月5日、血液や尿から、がんの診断マーカーとなる特定のマイクロRNAを簡単に検知する技術を開発したと発表した。同研究所 研究員の藤井聡志氏と東京大学生産技術研究所 教授の竹内昌治氏の共同研究による成果となる。
血中や尿中に含まれるマイクロRNAは、がんの発症に伴って特定のマイクロRNAが増減することが知られている。こうした特定のマイクロRNAをモニタリングすることで、がんの早期発見が可能になるとされるが、その測定には血中や尿中からマイクロRNAを精製・標識する必要があり、専門技術や煩雑な装置が必要だった。
研究チームは今回、採取した血液や尿を98℃で2分間加熱処理した後に反応液と混合し、検査チップに滴下してマイクロRNAの有無を診断できる技術を開発した。具体的には、反応液の中で標的のマイクロRNAがDNAに捕捉され、酵素反応によりアルファ‐ヘモリシンが遊離する。このアルファ‐ヘモリシンがチップ中に形成された脂質二重膜に小さな穴を開け、電気信号を発信する。
この技術によって、100万種のマイクロRNAの混合物の中から、標的配列のマイクロRNAを検知可能になる。同研究では、ヒトの血液・尿中に混合した標的配列のマイクロRNAを検知することに成功した。
検査に必要な検知チップと電気信号の測定装置はいずれも小型で、携帯も可能。自宅や小規模な医院などでも、がんの進行ステージやがんの種類によって増減する特定のマイクロRNAのモニタリングが可能になるという。これにより、さまざまな種類のがんの早期発見につながることが期待される。
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