産総研の担当者は「ABCIは単なるスパコンセンターではない。AIサービスを提供するプラットフォームの役割も担っている」と語る。ABCIを利用したAI開発を加速させるため、AI開発においてデファクトスタンダードとなったソフトウェアをABCIでは広く採用し、ソフトウェアスタックを構成した。
ディープラーニング(深層学習)フレームワークでは、Caffe、Caffe2、TensorFlow、Torch、PyTorch、Chainerなど多種にわたりサポート。開発環境、コンパイラもPythonを始め、GCC、Ruby、R、Javaなどを取りそろえ、もちろんCUDA SDKも用意されている。
特に、DockerとHPC分野で利用が拡大しているSingularityのコンテナエンジン2種をサポートしたことにより開発時の利便性を大きく高めたという。「技術の進歩が著しく速いAI分野では、OSやディープラーニングフレームワークのバージョン管理が課題となる。コンテナサポートによって、ユーザーは希望する計算環境が簡単に整備できるようになった」とした。
ABCIの料金体系は、要求計算資源量と専有時間などを積算した従量課金制だ。バッチ型や対話型のジョブサービス、1日単位で計算資源を確保できる予約サービスなどを提供している。1計算ノードを1時間専有利用した場合の単価が、2018年度は200円(税別)となるように料金設定しており、「AWSやAzureといったGPUクラウドサービスと比較して、10分の1程度の低コストで利用できることがメリット」(産総研担当者)だ。
また、1ノード内で使用する計算資源も選択可能だ。CPUとGPUを全て専有するタイプから、CPUを5コア専有、GPUは使用しないタイプまで、ユーザーは自分が実行するアプリケーションに合わせて計算資源を選択し、コストを抑制することができる。
産総研担当者は「日本のAI開発にABCIを是非役立ててほしい。また、ABCIは床面をかさ上げせず、コンクリートスラブ上に直接計算ラックを置くなど、従来のデータセンターにはない低コストな工法を用いた。このデータセンター構築技術も提供したいと考えている」と語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.