MONOist 共創の場という意味では、従来の産業の枠を超えた新たな出展者も非常に多くなっています。
鹿野氏 CPS/IoTを訴える中での産業の変化を示すという点、新たな産業界を呼び込んでの共創の場を作るという点で、2016年から新たな取り組みとして力を入れているのが「IoTタウン」である。まさに政府の「Society 5.0」や「Connected Industries」を体現する場だと考えている。日本は課題先進国ともいわれるが社会課題を町の形で見立て、それをIoTやCPSによる先進テクノロジーで解決するということをイメージした。
1つ特徴を発揮できたと考えるのがフィンテックだ。2016年から三菱UFJフィナンシャルグループに出展してもらい、2018年は新たに三井住友フィナンシャルグループからの出展もある。スマートファクトリーやスマートワークなど、さまざまな産業から新たな課題解決の提案が生まれている。2016年は4つの産業界からの出展だったが、今年は10の異なる産業からの出展があり、まさに「Connected Industries」の場となってきている。特徴として打ち出していきたい。
キーノートスピーチなども従来は主催工業会の会長が話すという形だったが、2018年からはこれも変えた。2018年はコマツやPreferred Networks(PFN)、ローソン、ファナックなどから登壇を得て、産業の枠を超えるということを体現できている。
MONOist 新たな方向性が鮮明になり成果を生み出す一方で、デバイスメーカーなどからは「完成品メーカーに訴えにくくなった」という声も聞きます。こうした反応についてはどう考えていますか。
鹿野氏 新たな方向性に対してさまざまな声があるのは事実で、従来の家電見本市としての商談の場を求めるような動きがあることも理解している。しかし、その方向性だけでは難しくなっていたのが現実だ。産業界全体の動きを考えても、ソリューション型へとどんどん進んでいる。個々のハードウェアや技術だけでは、社会課題を解決することはできない。
この辺りは実際に難しい問題ではあるが、2016年に新たな方向性を発表して以降、新規の出展者が大幅に増えている一方で、出展を取りやめる企業も数多く存在している。約700社の出展の内、約4割が入れ替わっているという状況だ。その中で、新たな方向性に沿った価値を打ち出していくのが展示会としての役割だと考えている。
ただ、デバイスメーカーが全てこの流れに否定的なわけではなく、受け入れられている面もあると考える。大手の電子部品メーカーなどは、2017年も多くがソリューション型の提案を行っており、非常に興味深いと感じた。従来の商流だけにこだわらず、新たな価値提案を示すことで、商流を超えた新たなビジネスなども生まれる可能性がある。そういう意味ではデバイスメーカーにこそ大きなチャンスがあると見ている。
実際にIoTなどの動きでは商流を超えて新たなビジネスを作る動きも生まれつつある。2018年は大手以外のデバイスメーカーでもこうした動きが広がると見ており、楽しみにしている。
MONOist 現状で課題と感じていることはありますか。
鹿野氏 今力を注いでいる取り組みとして、海外との関係性強化がある。従来は、海外から注目されており、海外からの出展者や来場者やメディア来訪なども数多くあった時期があった。しかし、日本の注目度が下がるとともに、これらが減少し今も反転できていない。ただ、IoTやCPSでの共創の場として考えた場合、日本の位置付けも変わってくる。こうした機会を生かし、海外からも注目してもらえる展示会としていきたい。
2017年はインドパビリオンなどを設置したが、2018年は新たに欧米などのベンチャー企業も呼び込めるような「コクリエーションパーク」を設置。海外企業を巻き込んだ動きを作っていく。
エレクトロニクス系の展示会としては、米国のCES、ドイツのIFAなどがある。CESは技術の最先端を示す展示会として、IFAは年末商戦の見本市としての役割が明確化してきているが、CEATEC JAPANとしては「共創の場」として世界に打ち出せるようにしていく。
日本は課題先進国とも見られているが、社会課題を解決するための改善プロセスなどが日本の産業の強みだと考えている。IoT化などでデータを集められるようになるが、最終的な価値は現場にフィードバックするプロセスにある。日本の産業は、そこに強みが発揮できると考えており、その価値を打ち出せる展示会としていきたい。
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