アウディジャパンが2018年10月に発売するフラグシップセダン「A8」の新モデルは、レーザーや有機ELといった新しい光源をランプに採用した。より広い視界を確保して運転を支援する目的に加えて、ブランドの個性を演出するための光源の制御や活用が高級車を中心に求められていきそうだ。
アウディジャパンが2018年10月に発売するフラグシップセダン「A8」の新モデルは、レーザーや有機ELといった新しい光源をランプに採用した。
一般的なハイビームの2倍の照射距離を持つレーザーヘッドランプは、高度な配光制御を行うLEDヘッドランプと組み合わせることでより広い視野を確保する。リアランプは一部に有機ELを採用した。面で発光する特徴や、奥行きのある光らせ方を生かしてデザイン性を高めた。また、ドライバーが乗り降りする時には光の演出も行う。
新型A8はこうした新しい光源に加えて、LED素子を片側のヘッドランプで138個、リアランプは左右でぞれぞれ135個使用しており、LEDだけでも高度な制御技術を採用したといえる。より広い視界を確保して運転を支援する目的に加えて、ブランドの個性を演出するための光源の制御や活用が高級車を中心に求められていきそうだ。
アウディは、「R8」の先代モデルの限定仕様車からレーザーヘッドランプを採用している。それ以前にもWEC(世界耐久選手権)の参戦車両で取り入れた実績があった。LEDヘッドランプが届かない範囲をレーザーヘッドランプが補完する。レーザーヘッドランプの作動条件は、街灯が少ない欧州の郊外やアウトバーンを想定して開発されたため限定的で、「日本国内で走る場合はめったに点灯しないかもしれない」(アウディジャパンの説明員)というほどだ。
レーザーモジュールは左右のヘッドランプユニットに1個ずつ搭載されている。レーザーヘッドランプが点灯するのは、オートライトとオートハイビームをオンにした状態で、なおかつ時速70km以上で走行中であり、正面に車両がいないことをセンサーが検知した場合となる。前方車両や対向車両を検知した場合は自動的にロービームに切り替わる。歩行者がレーザー光源を直視するのを避けるため、低速域ではLEDヘッドランプのみが点灯する。
LEDヘッドランプは、前方や対向車線の車両を検知した場合に部分的にロービームに切り替えたり、ハイビームを減光したりする。また、カーブの曲率に合わせて前方向けのロービームとは別に進行方向を照射する。さらに、前方車両の方向指示器が点灯したのをフロントカメラが検知すると、前方車両の車線変更に合わせてハイビームを消灯する予測調光機能も持たせた。
有機ELを採用したリアランプは、「TT RSクーペ/ロードスター」のオプション向けでアウディとしては初めて量産した。新型A8では片側に4枚の有機ELパネルがあり、テールライトに2枚、ブレーキランプに2枚使用している。有機ELパネルは厚さが1mm未満で、1枚が2つに区切られており、施錠と解錠に合わせて個別に点灯する。ブレーキランプはLEDも使用した。また、リアの方向指示器はLEDとなる。
ランプでのLED制御の高度化はさらに進む見通しだ。市光工業は2022年ごろの製品化を目指してデジタルマイクロミラーデバイスを採用したLEDヘッドランプの開発を進めている。デジタルマイクロミラーデバイスは大型プロジェクターなどに採用されているMEMSデバイスで、前方車両や対向車両に合わせて最小限に消灯することが可能になる。また、歩行者に向けて横断歩道を投影して道を譲る意思を示したり、運転に必要な情報を路面に投影したりすることもできるとしている。
有機ELを光源に採用したリアランプはBMWも一部車種で採用している。ランプメーカー各社も、デザイン性向上で需要を見込み、開発を進めている。レーザーヘッドランプも有機ELリアランプも、コストの高さから当面の採用は上級モデルに限られるだろう。しかし、欧州のプレミアムブランドは、そのコストをかけてでもフラグシップモデルに個性を持たせて差別化を図る方針だといえそうだ。今後自動車のランプでは、さまざまな種類の光源を扱うことに加えて、LEDのより高度な制御にも対応することが重要になる。
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