米国の調査会社Gartnerは、「先進技術におけるハイプサイクル2018年版」を発表した。調査結果によるとデジタルツインや深層学習などが「過度の期待のピーク期」を迎えていることを明らかにした。
米国の調査会社Gartner(以下、ガートナー)は2018年8月20日(現地時間)、「先進技術におけるハイプサイクル2018年版」を公開した。
ガートナーのハイプサイクルは2000を超えるテクノロジーをグループ化し、その成熟度、企業にもたらすメリット、今後の方向性に関する分析情報を図で表したもの。先進的な技術が「大きな期待」「幻滅」「最終的な安定普及」といった共通のパターンで定着することから、それぞれの技術がこのハイプサイクルのどこに位置するのかを示した調査資料だ。1995年からグローバル版を展開している。
今回の「先進技術におけるハイプサイクル2018年版」では、2017年版※)などそれ以前に示された、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、ロボティクスなどの技術が着実に進歩し、ステージを進めてきていることが特徴だといえる。
※)関連記事:深層学習や機械学習は“過度の期待のピーク期”、ARは“幻滅期”のどん底に
ガートナーでは5つのテクノロジートレンドとして「AIの民主化」「エコシステムのデジタル化」「DIYバイオハッキング」「透過的なイマーシブスペース」「ユビキタスなインフラストラクチャ」の5つを挙げており、基本的には第4次産業革命やデジタルトランスフォーメーション(DX)などとされる動きが着実に広がり、浸透してきていることを示した。
「過度の期待のピーク期」の頂点にあるのが「深層学習」で、これは2017年版と変わっていない。「幻滅期」には進んでおらず、引き続き高い期待感を維持している。一方で「IoTプラットフォーム」は2017年版と引き続き「過度の期待のピーク期にあるものの「幻滅期」にかなり近づいている。「ブロックチェーン」は既に「幻滅期」の入り口に立っており、現実的な課題解決のフェーズに入ったことが伺える。
新たに「過度の期待のピーク期」に入ったのが「デジタルツイン」や「バイオチップ」「ブレインコンピュータインタフェース」「スマートロボット」「自律モバイルロボット」「ディープニューラルネットワーク向けASIC」などだ。従来このハイプサイクルで中心を担っていたITやソフトウェア系の技術だけでなく、ハードウェアや物理的な技術が数多く登場し、注目を集めている点も2018年版の特徴だといえる。
自動運転車については、2018年版では「自律走行(レベル4)」と「自律走行(レベル5)」とに分かれて登場。レベル4については「幻滅期」に入っており、実現に向けた課題から期待感が急減している状況だといえる。一方でレベル5についてはまだ「黎明期」でこれから期待が高まっていくという状況である。自動車系では黎明期の初期状態として「空飛ぶ自律走行車」も登場。最近では研究開発領域では活発な取り組みが見られるが、関心が高まっている様子が伺えた。
※)関連記事:機械学習は“過度の期待”のピーク、自律走行車は“幻滅期”の一歩手前
一方で、「幻滅期」のどん底とされたのは「AR(拡張現実)」である。2017年版でもどん底の少し手前だった状況であり「幻滅期」から「啓蒙活動期」および「安定期」へと抜け出すのに手間取っている。さらに、VR(仮想現実)系技術としてはMR(複合現実)が新たに「幻滅期」に突入しており、「期待はずれ」感が高まっているようだ。ただ2017年版で「啓蒙活動期」だったVRは2018年版では登場しておらず、無事に「生産性の安定期」へと進んだとみられる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.