古い工場で実現したデジタルツイン、シーメンスが示す“デジタル”の本当の意味:スマート工場最前線(3/3 ページ)
これらの工場全体の一元的な「見える化」の成果により、バードノイシュタット工場では数多くの成果が出ているという。具体的には、生産に関わるリードタイム(スループットタイム)を40%削減することに成功したという。さらに、新しい機械の立ち上げ時間も60%削減できるようになり、効率的な運用ができるようになったことで工具などの工作機械で使うツールコストについても20%削減できたという。
これらの成果については、少量多品種製造を余儀なくされるサーボモーター工場では大きな成果をもたらすものである。「製品の個別化と品質の向上、効率化、スピード、柔軟性は工場として大きなテーマとなっていた。これらをデジタル化により改善できることが証明されている」と説明員は語っている。
工場の各機器が「つながる」ことでリードタイムを40%削減することに成功(クリックで拡大)出典:シーメンス
ただ、この目覚ましい成果が、日本の製造業の工場に当てはめて得られるかというと評価が難しい点もある。バードノイシュタット工場が「デジタルエンタープライズ」ソリューションを導入したために見えた数値では、機器によっては設備稼働率が20%台のものも多く存在し、理由の不明瞭な非稼働時間が数多く存在していることが見て取れた。さらに工場現場を見ると、止まっている機械の多さや仕掛かり在庫が乱雑に山積みされている様子も見られ、日本の製造現場であれば、課題とされる点が数多く散見された。つまり、現状の製造現場で実現できていることだけに限れば、日本の製造現場の方が優れている点が多いのだ。
この点だけを見ると「デジタル化は必要ない。従来の生産改善で十分」という話になりがちだが、果たしてそうだろうか。バードノイシュタット工場は、基本的には生産情報や設計情報の全てを一元的につなぐ取り組みを進めている。これらをつなぎ合わせることで、従来は見えなかった工程間の改善などにも活用することが可能となる。
そもそも生産改善についても「標準」を定めることから全てが始まる。その基準数値を決めた「標準」に対して、改善のアプローチを進めていくことが基本である※)。その基準となる数値を取得し、比較や分析を行うツールが「デジタル化」の第1段階の成果なのである。バードノイシュタット工場はそのオートマティックな取り組みを開始している。現状でよいと考えるのか、対応が必要と考えるのか、判断が分かれるところである。
※)関連記事:「標準時間」とは何か?
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(取材協力:シーメンス)
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