トヨタ自動車は2018年8月3日に開催した決算会見で、“もっといいクルマづくり”のための構造改革「TNGA(Toyota New Global Architecture)」の取り組みの現状を紹介した。
従来の原価で足し算すれば、クルマの値段が上がってしまう――。トヨタ自動車は2018年8月3日に開催した決算会見で、“もっといいクルマづくり”のための構造改革「TNGA(Toyota New Global Architecture)」について、取り組みの現状を紹介した。
トヨタ自動車 副社長の吉田守孝氏は「装備や性能を向上させ、お客さまからはいいクルマになったと評価していただいているが、価格も高くなったという指摘がある。まだまだお客さま目線になり切れていない。お客さまが求めるクルマをもう一度見直して、“全方位”ではなくお客さまが求める仕様に厳選していきたい」と説明した。
今後は、愚直な原価低減に取り組むとともに、先行技術開発や商品企画の強化、開発現場へのトヨタ生産方式の導入を進め、TNGAを進化させていく。
トヨタ自動車は2012年にTNGAの導入を発表、その後、2015年に全面改良した「プリウス」がTNGA第1号車として世に出た。その後、中型クラスでは「プリウスPHV」「C-HR」「カローラスポーツ」が、大型クラスは「カムリ」「クラウン」、レクサスブランドでは「LC」「LS」がTNGA採用モデルとして投入された。プリウスとプリウスPHV、C-HR、カローラスポーツは、中型クラス向けの共通のTNGA部品を採用している。これにより、同クラスでセダン、SUV、ハッチバックといった異なる車両タイプを投入しやすくなったという。
「TNGA部品」は、クルマの基本部分となる機能部品を意味し、車両原価の6〜7割を占める。これらの部品で全体最適を進め、共用化を図ることで原価を低減する狙いがある。それだけでなく、パワートレインとプラットフォームを一体で開発することにより、デザインや走行性能、燃費や安全性能の向上にもつなげる。TNGAで作り込んだ基本部分をベースに、トヨタ自動車社内のカンパニーがそれぞれの車種を開発していく。
プリウスの現行モデルは、パワートレインの配置から見直した低重心プラットフォームを採用してデザイン性と走行性能を向上させたが、ガソリンエンジンは先代モデルから引き継いだ。プラットフォームに加えて、エンジンやトランスミッションまでTNGAで新開発して採用したのは、カムリやLSからとなる。
カムリでは排気量2.5l(リットル)の直列4気筒直噴ガソリンエンジンに8速ATもしくはハイブリッドシステムを採用。クラウンのハイブリッドモデルにも同じTNGAエンジンが採用されている。LS向けには、FR(後輪駆動)用の「マルチステージTHS II」や10速ATをそろえた。
その後、排気量2.0lクラスの新しいTNGAパワートレインも追加し、カローラスポーツ(米国名カローラハッチバック、欧州名オーリス)に展開した。エンジンは、2016年に先行して発表した排気量2.5lの直列4気筒直噴ガソリンエンジンでモジュール化した設計を基に排気量を2.0lとした。トランスミッションは新開発のCVTや6速MTの他、ハイブリッドシステム(THS II)と組み合わせる。
TNGAパワートレインは2021年までにエンジンで9機種、トランスミッションで4機種、ハイブリッドシステムで6機種を投入する。また、現在のTNGA採用モデルは中大型クラスが中心だが、今後コンパクトクラスにも広げていく。TNGA採用モデルは2020年ごろまでに新車販売の半数まで拡大する見通しだ。
これに合わせて、グローバル30カ所の工場でTNGA採用モデルを生産する。これに合わせて、専用工程が多い従来の生産ラインから、工程を汎用化してリードタイムも短縮できるTNGA専用のラインに変更していくことも必須となる。
会見で吉田氏は「車両価格は、環境規制や安全規制の強化に加えて、Toyota Safety Sense(運転支援システム)のようなニーズも高まっている。そのまま従来の原価に足すのではなく、さらなる原価低減が必要だ」とコメントした。
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