2050年に電動車100%へ、開発と調達、オープンイノベーションに手厚い支援自動車新時代戦略会議(2/2 ページ)

» 2018年08月02日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
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「サプライヤー応援隊」も発足

 AICEでは、大学が参加するプロジェクトを倍増して大学同士の連携も強化し、人材育成につなげる。AICEの活動により、サプライチェーンの基盤強化も図る。AICEに参加するサプライヤー数を現状の28社から120社程度まで増やし、サプライヤーの技術力を底上げする。なお、2018年4月に発足した「自動車用動力伝達技術研究組合(TRAMI:Transmission Research Association for Mobility Innovation、トラミ)」については中間整理案で触れられていない。

 2019年度中には、地域ベースでサプライヤーの競争力向上を支援する「サプライヤ応援隊」を立ち上げる。日系自動車メーカーやサプライヤーが、電動車や電動部品の海外生産をスムーズに立ち上げるための人材育成を行う体制も同年度に構築する計画だ。

資源調達、リユースとリサイクル、交換式バッテリーに焦点

 電動車の普及に伴い、駆動用バッテリーが大量に流通することが予想される。そのため、リチウムイオン電池のサプライチェーンに関わる社会システムの確立にも取り組む。具体的には、電池資源の調達を安定化するスキームや、電池の残存性能を適正に評価する手法の確立、リユースとリサイクル(※5)がビジネスとして進む環境の整備が必要だとしている。

(※5)関連記事:「日産は2022年に年間100万台の電動車販売、使用済みバッテリーの再利用も並行で」「駆動用バッテリーを電力系統の蓄電池システムとして再利用、トヨタと中部電力

 電池資源の調達については、コバルトなどを共同で調達、備蓄できるスキームを2018年度中に立ち上げる。また、紛争鉱物や児童労働によって採掘された鉱物の使用をスクリーニングして回避できる国際的な枠組みの構築も目指す。

 電池資源の1つであるコバルトは、2018年5月下旬ごろに直近の最安値から3.5倍まで高騰した事例があった。炭酸リチウムも、中国で2016年に前年比4倍まで価格が上昇し、直近も高値水準で推移している。今後、これらの資源の必要量は、各国の電動車普及政策を受けて飛躍的に増加する見通しだ。調達リスクの低減が重要になる。

台湾メーカーGogoroのバッテリー交換型電動スクーター(クリックして拡大)

 駆動用バッテリーの残存性能の評価は、EVやPHEVが中古車として流通する際の適正な評価に直結する。2018年度中に、残存性能の評価に関するガイドラインを策定するとともに、使用済みバッテリーを共同回収するスキームの基盤の構築を目標とする。リチウムイオン電池のリサイクルに必要な技術開発テーマの洗い出しや、リユース電池が市場として成立するためのスペックの検討や、技術検証を実施する。

 二輪車の電動化で想定されるバッテリー交換式(※6)のタイプには、電池パックの標準化と共通利用を進め、電池やインフラ整備のコストを下げて普及につなげる。

(※6)関連記事:「電動スクーターを“普通に”使えるように、台湾二輪車メーカーはインフラ計画も描く」「バッテリーを交換して走る電動車の普及へ、富士通とベンチャーが協業

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