「人とくるまのテクノロジー展2018」に出展した商用車メーカーに小型電動トラック開発の取り組みを聞いた。
商用車メーカー各社が小型トラックの電動化に取り組んでいる。小型トラックは1日の走行距離やルートが一定のため、現時点で満充電からの走行距離に課題がある電気自動車(EV)を導入しやすい。EVならではの特徴の生かし方は、各社で個性が出てきそうだ。
メーカー | 三菱ふそう | いすゞ | 日野 | |
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車両名 | eCanter | ELF EV | ― | |
満充電からの走行距離 | 100km | 100km | 100km | |
モーター | 最高出力 | 129kW | 150kW | 70kW |
最大トルク | 420Nm | 300Nm | 280Nm | |
バッテリー | 容量 | 13.8kWh | 40kWh | 28kWh |
個数 | 6個 | 2個 | 4個 | |
三菱ふそうは量産中。いすゞは2018年内にモニター向けに出荷。日野は実証実験の車両の数値となる。 |
日野自動車は「人とくるまのテクノロジー展2018」(2018年5月23〜25日、パシフィコ横浜)において、FF(前輪駆動)の小型電動トラックのプラットフォームを出展。2013年にヤマト運輸や西濃運輸と実施した実証実験で用いた車両と同じものだ。
このプラットフォームは駆動用モーターを運転席の下に収め、荷室の床面にバッテリーを配置することにより、従来のFR(後輪駆動)では難しかった超低床を実現。床面地上高は440mmとした。実証実験では、冷蔵冷凍バンとドライバンを架装した。
日野自動車の説明員は2013年に実施した実証実験について「配達で荷物を降ろす時に、1歩で乗り降りできる床面の低さが好評だった」と振り返る。従来の床面地上高では、配達先に到着する度に荷室に登らなければならなかったためだ。
実証実験では、FF車ならではのデメリットも見えた。実証実験に参加した企業から、タイヤハウスが荷室に出っ張るため、既存のパレットが積み込みにくくなるという声が寄せられた。また、積載量が1.2トンでは少ないという指摘も出た。小型電動トラックの製品化時期は未定としているが、量産モデルでも超低床の特徴を生かす方針だ。
2013年の実証実験で使用した車両は走行距離がおよそ100kmで、「使われ方によっては足りないといわれている。配送センターと配達先、配達先と配達先の間が近い場合は100kmでカバーできるが、地方都市などで配送センターと配達先が離れている場合には不安があると聞いている。駆動用バッテリーの搭載数を増やすか、より高エネルギー密度のバッテリーが必要だ」(日野自動車の説明員)。
いすゞ自動車は2018年内に小型電動トラック「ELF EV」の実証を始める。「人とくるまのテクノロジー展2018」ではパネル展示で取り組みを紹介した。ELF EVは、駆動用バッテリーで冷蔵冷凍バンや塵芥収集(ごみ収集)車といった架装も駆動しながら、走行距離100kmを確保する。日野自動車とは対照的に、100kmは十分な走行距離だと見込む。駆動用バッテリーは使い方に応じて搭載個数を1個もしくは2個で選べるようにした。
架装と駆動用モーターへの電力の配分は「ジャンクションブロック」を経由して行う。充電中や外部に電力供給する場合など、駆動用モーターを切り離して安全に配電する。「架装にバッテリーの電力を使うのは走行距離に影響するように見えるかもしれないが、エンジンを止めても架装部分を動かせるのがメリットになる。従来はエンジンをかけていないと架装を動かせなかった。駆動用バッテリーの電力を使えば信号待ちなど停止中もバンの中を冷やしたり、住宅地で静かにごみを収集したりできる」(いすゞ自動車の説明員)。
いすゞ自動車の説明員が強調するのは、「エルフ」のシャシーをそのまま利用している点だ。「ロング、ショート、ワイド、ナローなどそれぞれの仕様にEVでも対応できる。まずは従来のエルフと同じ使い勝手で提供したい。ただ、電動化すれば、FF化や低床化含めさまざまな可能性が広がる。まだ何が正解かは分からない」(いすゞ自動車の説明員)。
小型電動トラックは三菱ふそうトラック・バスが先駆けて量産を始めた。既に、セブン‐イレブン・ジャパンや米国の貨物輸送会社ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)への納入が決まっている。
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