三菱ふそうトラック・バスが21年ぶりに「スーパーグレート」を、UDトラックスは13年ぶりに「クオン」をフルモデルチェンジした。現場の声を踏まえて大型トラックはどう変わったのか解説する。
三菱ふそうトラック・バスとUDトラックスが、相次いで大型トラックの新モデルを発表した。2017年9月に強化される排出ガス規制に対応したもので、三菱ふそうトラック・バスの「スーパーグレート」は21年ぶり、UDトラックスの「クオン」は13年ぶりのフルモデルチェンジとなる。
今回、スーパーグレートとクオンの両方に試乗する機会を得た。全面改良を機に取り入れられた新技術や、乗り比べて分かった両社の思想の違いを紹介していく。
スーパーグレートにはさまざまな先進安全装備が採用されたが、その中でも「サイドガードアシスト」がユニークだ。これは左折時の巻き込み事故を防止するもので、検知角120度のミリ波レーダーを2基用いて、前後方向それぞれに配置することで180度の範囲で車両などの存在を検知する。2基のレーダーは77GHz帯を使用しており、発信するレーダー波は中央のおよそ半分の範囲でかぶることになるが、どの位置に車両が存在するかまでは検知する必要がないから影響はないようだ。
自動ブレーキやアダプティブクルーズコントロール(ACC)が利用する前方の障害物の検知もフロントバンパー部に組み込まれた77GHz帯のミリ波レーダーによって行っている。特徴的なのは障害物検知にカメラを使用していない点だ。
解説してくれた三菱ふそうトラック・バス 電子システム実験部の木下氏によれば、ミリ波レーダーで十分に正確な位置と距離が判別できるという。カメラも搭載されているが、カメラは車線逸脱警報(LDW)などの機能に利用しているそう。近距離の計測や障害物の判断にはミリ波レーダーでは不十分と思われてきたが、解析技術の進化もあってカメラに頼ることなく認識できるようだ。
乗用車では車線逸脱警報からさらに一歩進んでステアリング操作のアシストまで行う車種が増えてきたが、電動パワーステアリング(EPS)は現状では軸力が不足しており、大型トラックの操舵(そうだ)を制御するのは困難。そのため、油圧パワーステアリングを採用せざるを得ない状況にあるため、積極的なステアリングの支援は当分は実現することは難しいようだ。
それでも、先進運転支援システム(ADAS)の充実ぶりはなかなかのもの。居眠り運転やわき見運転を防止するため、ダッシュボードにドライバーのまぶたの動きを計測して警告する機能もある。
そんな先進性と共に注目に値するのが、車体の軽量化である。乗用車では軽量化は燃費や衝突安全性を向上するために寄与する(実際にはもっと広範囲にクルマの性能を向上させる)が、大型トラックの場合はむしろ積載能力を高めるという実用性の向上に威力を発揮する。路面や橋梁などの負担から軸重(荷物を含めた車両の総重量から各車軸にかかる荷重のこと)が定められているため、車体を軽くするということは、同じ軸重でより多くの荷物を積めるからだ。
パワートレインも新型スーパーグレートはエンジンを2種類用意、変速機は逆にAMT(自動マニュアル変速機)1本に絞り込むことで省燃費と軽量化を実現している。驚くべきはエンジン単体でおよそ500kgもの軽量化を実現した排気量7.7l(リットル)のディーゼルエンジンだ。高圧コモンレール式燃料噴射に2ステージターボを組み合せることで、この排気量でも十分な動力性能を確保している。環境性能を高めるために尿素水の噴射システムなど排気の後処理装置をさらに進化させ、さらなる省燃費のためにアイドリングストップ機構も盛り込んだ。
開発したエンジニアによれば排気量7.7lへのダウンサイジング化はAMT専用としたことで実現できたそうだ。
「MTでは7段以上のギア数では操作が煩雑過ぎて実用的ではないんです」(三菱ふそうトラック・バスのエンジニア)。かつてはMTでも12段変速を用意していたこともあったそうだ。AMTなら変速操作は基本的に電子制御によって自動化されている。また、負荷状態によってECUが飛ばしシフトを自動的に行うことで、無駄な変速操作(駆動ロスやクラッチの摩耗につながる)を減らすこともできる。
コモンレール式の燃料噴射にインジェクター自体にも加圧機構を組み込むことにより、作り上げた高圧コモンレールは、さらに高圧化を求めたというより、燃料ライン全体の圧力を下げることを目的としたものだという。
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