そしてブレーキのフィーリングが素晴らしい。1コーナーへの進入は(こう書くと本当にスポーツカーやレースカーの試乗記のようだ)ブレーキペダルを踏むだけで、エンジンブレーキを強力に利かせる排気ブレーキが連動したブレーキブレンドを作動させる。これによりディスクブレーキのパッド寿命を伸ばす効果もあるのだろう。
停止時にもまるで乗用車のようにスーッと滑らかに停止できる。一般的な大型トラックのプシュプシュとエアブレーキを鳴らしながらカクカク停止するのとは別物だ。
ハンドリングがいいのも驚いた。もちろん試乗は空荷ではなく、前述のように総重量20トン、つまり11トン前後のウエイトを積んでいるにもかかわらず、曲がりくねった富士の第3セクターを難なく駆け抜ける。UDトラックスがここで試乗会を開いた理由に思わず納得させられた。
クオンのパワーユニットは一見、先代モデルから継承しているように思えるものだが、車体の軽量化くらいでは厳しくなった排ガス規制や燃費規制をクリアできるものではない。GH11型と型式こそは同じだがディーゼルエンジンはピストン形状を大きく変え、マルチホールインジェクターの噴射パターンに合わせたウエーブ型のピストンクラウンを採用している。
インジェクターも従来のユニットインジェクターにコモンレールの要素を融合した新システムに変更して、高い燃圧により燃料噴射をさらに緻密化した。ウオーターポンプには可変機構を組み込み、速度を変化させることにより水温が安定している時には駆動損失を軽減している。
トランスミッションも従来通り7速MTと12速AMTの2種類を用意し、12速AMT「ESCOT」はケーシングなど見た目には大差ないが、制御ソフトと内部構造に改善を加えて第6世代「ESCOT-VI」へと進化させている。その効果は試乗時に体験したダイレクト感の高いシフトフィールに表れている。
そして、前述のディスクブレーキである。ドラムブレーキから変更したことによって得たのは、長い下り坂でのフェードを防いで安定した制動力を発揮することと、軽量化だ。ドラムブレーキはブレーキドラムの強度が必要なため非常に重かったが、ディスクブレーキの採用により100kgの軽量化を果たしているという。またフレームも高張力鋼板を採用して板厚を減らしながらも強度や剛性を確保し、軽量化を実現している。
後日、ブレーキキャリパーやエアブレーキシステムを供給しているWABCOのスタッフからも話を聞く機会を得た。長年の活動が実って日本の大型トラックにディスクブレーキが採用されたのは、快挙といえるそうだ。
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