これらの評価結果を基に、パッケージ化した各種医療機器を“IoT活用”によってつなげたのがスタンダードモデルになる。その“IoT活用”のための技術となるのが、デンソーが中心になって開発を進めてきた治療室用インタフェース「OPeLiNK」である。OPeLiNKによって、各種医療機器の情報を「時系列の治療記録」として収集し、リアルタイムに提供(表示)することが可能になった。これらの情報は、手術室外の医師や技師などにも共有できるので、それによって治療の効率性や安全性の向上も期待できる。信州大学病院のスタンダードモデルでは、17の医療機器がOPeLiNKでつながっているという。
OPeLiNKの基になるのが、工場の生産設備をつなぐミドルウェアとして利用されているORiN(Open Resource interface for the Network:オライン)だ※)。OPeLiNKの開発を担当したデンソー 新事業統括部 メディカル事業室 室長の奥田英樹氏は「現在、手術室内で使う医療機器は、映像系を除けばほぼスタンドアロンで利用することが前提になっている。こういった分断はかつて工場内でも起きていたが、それを解決したのが、何でもつなげる国際標準のミドルウェアであるORiNだった。スマート治療室では、ORiNを基にしたOPeLiNKで手術室内の課題を解決していきたい」と意気込む。
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なお、スマート治療室の開発プロジェクトで中核的な役割を果たす医療機器となっているのが、手術室内で術中に利用可能なMRIであるオープンMRIだ。漏えい磁場の少ないオープンMRIの開発を東京女子医科大学とともに2000年から注力してきた日立製作所は、スマート治療室の事業化において、オープンMRI以外のさまざまな医療機器をつなげて統合システムとして仕上げるインテグレーターの役割も果たすことになる。
日立製作所 ヘルスケアビジネスユニット 外科治療ソリューション本部長の中西彰氏は「スマート治療室の開発から施工、販売に至るまでを手掛けていく。オープンMRIの効果も併せて訴求していきたい。国内だけでなく、米国や東南アジアなど海外展開も進めたい」と述べている。
会見では、スマート治療室の“IoT活用”で重要な役割を果たすOPeLiNKの国際標準化に向けての協調体制についても説明があった。
手術室内の医療機器をネットワーク接続する標準規格については、OPeLiNKの他に、米国のMDPnP、ドイツのOR.NETがある。麻酔科医が主導して2004年から標準化進められているMDPnPはつながる範囲が限定的だ。2012年から活動しているOR.NETは、OPeLiNKと協調しての規格化が進んでいる。会見では、来日中のOR.NETの担当者が「手術室内のできるだけ多くの機器をつなげられるようにしたい」と述べ、両者の協調体制をアピールした。
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