Windows 10 IoT Enterpriseには、含まれる機能・アプリケーションや、提供されるアップデートの内容が異なるCBB版とLTSB版があります。
Windows 10がリリースされてから間もなく3年になりますが、リリースと同時に開始されたWindows as a Service(WaaS)には数回の仕様変更が行われました。これらは大まかに2つに分けることができます。
これらは年2回、無償で提供される更新プログラムを適切なタイミングで適用することで新機能の追加を受けとりつつ、安全な状態で使用できるというものであり、リテール版では「Windows 10 Home/Pro」、組み込み向けではWindows 10 IoT EnterpriseのCBB版が該当します。
CBB版ではWindows 10の最初のリリースであるバージョン1507から、最新のApril 2018 Update(バージョン1803)まで、機能の追加やUIの変更/改善などを伴う複数回の更新プログラム/バージョンアップが提供されています(1.)。バージョンごとにサポート期間が定められているため、サポートを継続的に受けるためには、より新しいバージョンへの更新が必要です(2.)。
しかしながら、WaaSで提供されるWindows 10=CBB版のように、安全に使用するためには定期的なバージョンアップが必要というサービスモデルは、製品を同一の機能のまま長期間動作させるといった、多くの組み込み機器のシナリオとはマッチしません。このため、Windows 10 IoT Enterpriseには、長期間機能を固定した運用に適した、LTSB版が用意されています。LTSB版ではWaaSと異なり、以下のようなサポートが行われます。
LTSB版は2つのサポートフェーズによる合計10年間サポートが主軸となっており、Windows 7のような従来OSに近い形のサポートを受けることが可能です(1.、2.)。一方で、CBB版でバージョンアップにより追加される機能がLTSB版には提供されず(3.)、Microsoft EdgeやCortanaといった一部機能が使用できない(5.)、といった機能上の制限には注意する必要があります。
現在、LTSB版には2015年7月にリリースされたLTSB2015と、2016年8月にリリースされたLTSB2016の2つがありますが、マイクロソフトの公式ブログ「Microsoft blog」では2018年の後半に新たなLTSB版をリリースすることが発表されています。新しいLTSB版は“新しい製品”ですので、リリース済みのLTSB版やCBB版からの無償アップグレードは提供されません(4.)。
CBB版とLTSB版の違いを図3にまとめました。
新機能を含むバージョンアップを適用していくことでサポートが継続されていくCBB版と、10年間機能が固定された状態でサポートが継続されるLTSB版、これらはインストールメディアから異なる別々の製品で、インストール後にLTSB/CBBを切り替えて使うといったことはできません。Windows 10 IoT Enterpriseへの移行においては、目的の組み込み機器に求められる機能、バージョンアップや保守の計画に応じて、どちらの版を使用するかを選択いただくことになります。
余談ではありますが、2017年後半にサービシングの呼称が変更されており、それぞれCBB(Current Branch For Business)がSAC(Semi Annual Channel)、LTSB(Long Term Servicing Branch)がLTSC(Long Term Servicing Channel)となりました。現在は各種情報などで新旧の呼称が混在していますが、これらは呼称の違いのみで、内容に違いはありません。この記事では、製品名に使用されている呼称に合わせてCBBとLTSBを使用しています。
次回はOSの標準機能やシステム要件などを中心に、Windows 7世代からWindows 10世代へ移行する際に考えておくべきことなどについて説明していく予定です。
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