Windows 7の最新テクノロジを継承した最新の組み込みOS「Windows Embedded Standard 7」の概要、刷新されたツール群を紹介
2010年6月1日より、マイクロソフトから「Windows Embedded Standard 7(以下、WES7)」の提供が開始されました。これまでマイクロソフトが提供してきた「Windows XP Embedded」「Windows Embedded Standard 2009(以下、WES2009)」の後継となる組み込み用途OSです。
本連載では、WES7の概要や開発ツールの使い方などについて紹介していきます。
WES7とは、デスクトップPC向けOSである「Windows 7」をベースとし、Windows 7で搭載されている各機能をパッケージとして分割・管理できるようにし、組み込み用途向けにカスタマイズ可能としたOSです(ちなみに、前バージョンのWES2009は、Windows XP SP3がベースでした)。Windows 7がベースOSとなっているため、Windows 7用に開発されたアプリケーションやドライバが、WES7上でほぼそのまま動作するのも見逃せない特長の1つです。
Windows 7の各機能は、約150個のパッケージとして用意されています。ユーザーは任意でそれらパッケージを選択し、OSイメージに組み込むことができます。そのため、WES7では、デスクトップPC向けに提供されている最新のWindowsテクノロジ、例えばWindows AeroやWPF(Windows Presentation Foundation)、タッチ&ジェスチャといったリッチなユーザーインターフェイス(以下、UI)を実現する機能や、AppLockerやBitLockerといったセキュリティ機能などを組み込み機器に適用することができます。
もちろん、これまでと同様にシステムドライブなどを保護するための「EWF(Enhanced Write Filter)」といった、組み込み特有機能のパッケージも用意されています。また、デジタルサイネージやシンクライアント機器向けといったOS構成のテンプレートもあり、迅速な開発をサポートしています。
WES7では、開発ツールも刷新されました。「IBW(Image Builder Wizard)」というツールは、ターゲット機器上でWES7のOSイメージをコンフィグレーション、ビルドするウィザードを提供しており、評価用プロトタイプOSを容易に作成できます(図2)。また、「ICE(Image Configuration Editor)」は、従来の「Target Designer」に代わるツールで、OSイメージに含めるパッケージの選択や設定を開発用PC上で行います(図3)。なお、開発ツールについては次回で詳しく紹介する予定です。
WES7のOSイメージを実行するターゲットデバイスに必要なスペックは、以下のとおりです(表1)。
項目 | スペック |
---|---|
CPU | 1GHz以上のx86またはx64系CPU |
システムメモリ | 512Mbytes(x64の場合、推奨1Gbytes) |
ドライブ容量 | 空き容量1Gbytes以上のハードディスク またはSSD(Solid State Drive)※推奨4Gbytes以上 |
そのほか | ブート可能なDVD-ROMドライブ またはブート可能なUSB 2.0ポートとメディア (USBメモリやUSBハードディスク) |
表1 ターゲットデバイスに必要なスペック ※WES7 RC版のヘルプを基に記載 |
ここで注目すべきは、x64系CPUにも対応していることです。これにより、医療機器分野やエンターテインメント分野など、高画質の画像処理を多用するシステムでの活用も十分に可能だと考えていいでしょう。
続いて、開発用PCに必要なスペックを以下に示します(表2)。
項目 | スペック |
---|---|
CPU | 1GHz以上のx86またはx64系CPU |
OS | Windows Vista Service Pack 1 Windows Vista Service Pack 2 Windows Server 2008 Windows 7 |
システムメモリ | 1Gbytes(32bit) 2Gbytes(64bit) |
ドライブ容量 | 7Gbytes以上の空き領域 |
ソフトウェア | .NET Framework 2.0以降 MSXML 6.0以降 |
そのほか | DVD-ROMドライブ USB 2.0用ポート |
表2 開発用PCに必要なスペック ※WES7 RC版のヘルプを基に記載 |
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