いまだから知っておきたい! XP EmbeddedからStandard 7への移行ポイント【前編】特集 どうなる? どうする? 組み込み機器向けWindows XP(1/2 ページ)

2014年4月9日(日本時間)で「Windows XP」のサポートが終了。組み込み機器向けに提供されている「Windows XP Embedded」についても2016年1月に期限を迎えてしまう……。そろそろOSの移行を前向きに検討するときなのではないだろうか。本特集では、Windows XP Embeddedから「Windows Embedded Standard 7」への乗り換えを前提に、その移行ポイントを解説する。

» 2013年07月08日 10時00分 公開
[山下喜宏,MONOist]
いまだから知っておきたい! XP EmbeddedからStandard 7への移行ポイント

 「Windows XP」の製品サポート期限が2014年4月9日(日本時間)で終了します。これを受けて、市場では「Windows 7」や「Windows 8」への移行が急ピッチで進められています。製品サポートがなくなると、何が一番困るのかというと、マイクロソフトからのセキュリティ更新モジュールが提供されなくなることです。OSを移行していない場合、万一、セキュリティホールが発見されても、そのままの状態で使い続けなければなりません。当然、これではセキュリティリスクが高すぎるため、業務(ビジネス)などでの継続利用は難しいといえるでしょう。

 では、組み込み機器で使用されているOSはどうなるのでしょうか?

 「組み込み機器は、インターネットに接続されていないから大丈夫!」といった声をよく聞きます。もちろん、外部から完全に遮断されていて、セキュリティリスクが全くない製品もあるかもしれません。しかし、インターネットに接続されていなくても、USBメモリなどでデータやログの抽出を行ったり、アプリケーションプログラムの置き換えを行ったりすることもあるでしょう。そうした際に、意図しないところで、外部から悪意のあるプログラムが入り込む可能性も十分に考えられます。もちろん、インターネットに接続されている場合と比較して、その可能性は低いといえますが、ゼロではありません。また、Windows 7やWindows 8などの最新OSと比較した場合、Windows XP自体がセキュリティの脅威に対して弱い設計となっています。このため、組み込み機器であっても、Windows XPが採用されている製品は、可能な限り、新しいOSへ移行することをオススメします。

 代表的な組み込み機器向けWindows OS(Windows Embedded OS)の製品サポート期限(予定)を以下に示します(表1)。

組み込み機器向けWindowsの製品名称 製品サポート期限(日本時間)
Windows XP Professional for Embedded System 2014年4月9日
Windows XP Embedded 2016年1月13日
Windows Embedded Standard 2009 2019年1月9日
Windows Embedded Standard 7 2020年10月14日
Windows Embedded 8 Standard 2023年7月12日
表1 組み込み機器向けWindows OSの製品サポート期限(予定)

 ご覧の通り、「Windows XP Professional for Embedded System」は、通常のWindows XPと同じく2014年4月にサポートが切れてしまいます。それ以外の組み込み機器向けWindows OSを見てみると、一般のWindowsと比べて、かなり長いライフサイクルで提供されていることが分かりますが、「Windows XP Embedded」に関しては、2016年1月にサポート切れとなります。このことからも分かる通り、現在、Windows XPを採用した組み込み機器を取り扱っているのであれば、そろそろ新しい環境への移行を検討し始めた方がよいと思います。

 さて、そこで悩むのが「どのOSへ移行するか」です。移行先候補としては、以下の3つのOSが考えられます。なお、3つのOSごとのメリットとデメリットについても記載してありますので併せてご覧ください。



(1):Windows Embedded Standard 2009
 OS自体は「Windows XP Service Pack 3」と同じなので、Windows XP Embeddedからの移行そのものは簡単です。加えて、サポート期限が2019年まで延びるという魅力があります。ただし、ベースが同じWindows XPなので、OS自体のセキュリティ性という点では見劣りします。せっかくならば、新しいOSで追加されたさまざまな機能を活用して製品そのものの価値を高めたいところです。

(2):Windows Embedded Standard 7
 タッチジェスチャーのサポートによるリッチUI(User Interface)の実現、起動時間の高速化など、新しい機能が非常に魅力的です。OS自体のセキュリティ性も向上しています。サポート期限は2020年まであるので、十分といえます。また、2010年7月の販売開始から約3年が経過しており、Service Packも既にリリースされているなど、品質の安定性にも大きな魅力があります。余談ですが、新しいOSを追い求めず、できるだけ安定した既存OSを選択するのは日本人に多く見られる特徴だそうです。逆に、海外では新しいOSが出たらすぐに製品に採用したくなるそうです。

(3):Windows Embedded 8 Standard
 最新のWindowsストアアプリへの対応ができることもあり非常に魅力的です。Windows 8 PCやタブレットでおなじみのタイルベースで使い勝手の良いデザインが特徴です。ストアアプリのUIを使って、見た目と使い勝手が優れたアプリケーションを提供できます。また、デスクトップモードでの使用であれば、Windows 7とほぼ同じアーキテクチャなので、移行難易度は「Windows Embedded Standard 7」と同様です。サポート期限は、Windows Embedded Standard 7よりもさらに3年長く、2023年まで有効です。



 どのOSに移行するか、いろいろな意見もあると思いますが、本特集では、機能の豊富さと、日本人の大好きな安定性を兼ね備えた(2)Windows Embedded Standard 7(以降、WES7)を採用したいと思います。なお、ここからは移行する際のポイントを、次の4つのカテゴリに分けて解説していきます。

  • 一般的な非互換性による影響
  • OSのセキュリティ強化による影響
  • 64bit版のサポート
  • Internet Explorerの差分

一般的な非互換性による影響

Windowsの内部バージョンの差異

 Windowsの内部バージョンが異なることにより、移行後の動作で問題が発生する可能性があります。Windowsの内部バージョン番号は、Windowsのバージョンアップに伴い更新されるため、Windows XPとWES7の内部バージョンには、表2に示すような違いがあります。

製品名称 内部バージョン
Windows XP Professional for Embedded System 5.1
Windows XP Embedded 5.1
Windows Embedded Standard 2009 5.1
Windows Embedded Standard 7 6.1
表2 Windows XPとWindows Embedded Standard 7の内部バージョン

 アプリケーションが内部バージョンを確認し、Windows XPかどうかなどをチェックしているケースでは、当然期待した値が返ってこないため問題が発生します。

フォルダパスの差異

 Windowsの各種フォルダパスが異なることにより、問題が発生する可能性があります。Windows XPとWES7のフォルダパスには差分があります。例えば、「マイドキュメント」の場合は、以下のような違いがあります(表3)。

製品名称 「マイドキュメント」のパス
Windows XP C:\Documents and Settings\<ユーザー名>\My Documents
Windows Embedded Standard 7 C:\Users\<ユーザー名>\Documents
表3 Windows XPとWindows Embedded Standard 7のフォルダパスの違い(マイドキュメント)

 このため、アプリケーションでマイドキュメントのパスを決め打ちしてコーディングしているようなケースでは、WES7で正しいパスへのアクセスができない場合があります。

 しかし、実際には、WES7でサポートされている「接合ポイント」という機能が提供するリダイレクトにより、フォルダパスの違いによる問題は救済されます。ただ、救済はされますが、アプリケーションでは、「SHGetFolderPath()」などの適切なAPIにより、パスを取得するコーディングを心掛けることをオススメします。

 接合ポイントの具体的な内容については後ほど説明します。

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