東京大学は、脳神経活動の計測に8Kスーパーハイビジョンカメラを用いて、運動中のマウス大脳皮質から、軸索終末と呼ばれる神経細胞の一部における活動を大規模に計測することに成功した。
東京大学は2018年5月29日、脳神経活動の計測に8Kスーパーハイビジョンカメラを活用し、運動中のマウス大脳皮質から、神経細胞の一部である軸索終末での活動を大規模に計測することに成功したと発表した。同大学大学院医学系研究科 教授の松崎政紀氏らが、自然科学研究機構、埼玉大学と共同で実施した。
今回研究チームは、スピニングディスク共焦点顕微鏡に、8Kスーパーハイビジョンカメラを組み合わせた顕微鏡(8Kスピニングディスク共焦点顕微鏡)を開発。同顕微鏡は、広げたレーザー光を無数のピンホールを持つ高速回転する円盤(スピニングディスク)に照射することで、1000本近くにレーザー光線を分割し、回転によってそれらが高速に走査し画像化する。一方、8Kスーパーハイビジョンカメラは、3300万画素の高解像度を有するカメラで、高精細かつ高速な動画が取得できる。
次に、マウスの脳の視床に蛍光タンパク質を導入し、その視床に位置する神経細胞が大脳皮質の運動野に投射している軸索終末のイメージングを実施。その結果、同顕微鏡により、従来の2光子顕微鏡の25倍広い視野かつ2倍高速に撮影できた。また、実際に測定された活動について解析することで、1mm以上離れた場所での軸索終末の同期的な活動も計測できた。
この成果は、脳内における微細構造からの脳活動計測の新たな方向性を示したもので、今回開発した方法は、脳全体でのシナプス活動の計測の第一歩になるという。また同技術は、ライフサイエンス研究においても、細胞動態や細胞内の分子動態といった生命現象を高精細かつ高速に記録できる。これらにより、さまざまな疾患の理解とその治療法開発が期待される。
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