日立製作所は、尿検体を用いたがん検査の実用化に向けた実証試験を開始した。解析フローを半年間繰り返し実施し、尿中代謝物によるがん検査の実用化に向けた研究を進める。
日立製作所は2018年4月16日、尿検体を用いたがん検査の実用化に向けた実証試験を開始したと発表した。体外診断分野では初の実証試験だという。
同社は、尿中代謝物を用いたがん検査の研究を2015年に開始し、2016年6月には尿検体による健常者とがん患者の識別に成功した。しかし、実用化に向けては、がんに関連するバイオマーカー候補を効率的に抽出する方法の確立が課題となっていた。
今回、尿中代謝物からバイオマーカー候補を効率的に抽出する新しいがん検査モデルを開発。バイオマーカー候補となり得る物質を、統計的処理と機械学習を用いて数十種程度まで絞り込み、最終的なバイオマーカー候補となる数個の代謝物を抽出できるようにした。
併せて、尿検体の採取時間、採取場所、温度帯を管理する実証試験用ITシステム(検体管理システム)も開発。採取した尿を搬送する際の温度管理に加え、尿検体の採取時間、採取場所、容器状態も同時に管理可能にした。
今回の実証試験では、臨床情報(がんの有無)付き尿検体の回収、検体搬送時の温度のトレースや時間の管理、液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS)によるバイオマーカーの定量分析、がん検査モデルの構築とそれに基づくがんのリスク判別、臨床情報と判別結果との妥当性検討など、一連の解析フローを半年間繰り返し実施する。
LC/MSによる定量分析および解析データの評価については、それぞれシミックファーマサイエンスと名古屋大学医学部付属病院の協力を得て実施する予定だ。
同社は、今回の実証試験を通して種々のデータを取得して技術課題を洗い出し、尿中代謝物によるがん検査の実用化に向けた研究を進めるとしている。
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