日立製作所は、住友商事グループと共同で、尿中の代謝物を網羅的に解析することにより、健常者、乳がん患者および大腸がん患者の尿検体を識別する基礎技術の開発に成功した。
日立製作所は2016年6月14日、住商ファーマインターナショナル、住友商事(住友商事グループ)と共同で、尿中の代謝物を網羅的に解析することにより、健常者、乳がん患者および大腸がん患者の尿検体を識別する基礎技術の開発に成功したと発表した。
血液検査など腫瘍マーカー検査に代表される現在のがん検査は、医療検査機関での受診が必須であるため、受診者にとって時間的、経済的な負担が多くなっている。日立は、受診者自身で採取することができる尿検査に着目し、尿検体を用いた新たながん検査方法を確立するため、基礎技術の研究を進めてきた。
今回、住友商事グループが協力し、年齢、性別、がんの有無などの情報が付与された、健常者、乳がん患者、大腸がん患者の市販の尿検体各15検体を対象に、液体クロマトグラフ/質量分析計を用いて、糖や脂質などの尿代謝物を詳細に解析した。代謝物の水溶性や脂溶性の違いに着目して測定条件を最適化することで、それぞれの尿検体から、従来の2倍以上となる、1300を超える代謝物を検出することができた。
さらに、その尿中代謝物を比較したところ、含有量が大きく異なる代謝物が存在することが分かった。これらの代謝物をがんの有無を判別するバイオマーカー候補として10個程度まで絞り込み、主成分解析を行った結果、特定したバイオマーカー成分の含有量の違いから、健常者、乳がん患者、大腸がん患者の尿検体を識別することに成功した。
今回得られた成果は、将来、受診者自身が尿検体を採取して医療検査機関に送ることでがん検査が可能になる、新しい検査スタイルの確立に道を開くもので、がん検査の受診機会の増大に寄与する可能性があるという。
日立と住友商事グループは今後、がんとバイオマーカー候補となる物質との関連を詳細に調べ、また、バイオマーカー候補物質の構造解析を行い、大腸がん、乳がん以外のがんの識別や実用化に向けた研究を推進するとしている。
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