組み込みデータベースカタログ第4回は、日立製作所の組み込みデータベースEntierを取り上げる。お話を伺ったのは、 ソフトウェア事業部 DB設計部主任技師の関芳治氏である。
日立製作所とデータベースの歴史は長く、古くはIBM互換のメインフレーム時代にさかのぼる。また、同社のオープンシステム向けRDB(Relational DataBase)「HiRDB」は1994年に登場し、バージョンアップを重ねながら現在に至っている。現行バージョンのHiRDB Version 8(2006年)は単なる汎用RDBの枠を超え、金融系のバックエンドからネットワーク運用まで、幅広いジャンルに適用されている。対応OSは、エンタープライズ分野で主流のWindows系とUNIX系(HP-UX、AIX、Solaris、Linux)であり、組み込み向けとしては当然ながら必須リソースも大きい。
組み込み分野は、HiRDBとはまったく異なるマーケットである。Entierは、日立製作所がこれまでに蓄積したノウハウを生かしつつ、組み込み向けにフルスクラッチで開発した製品である。従って、内部構造やノウハウはHiRDBと共通するものが多いにしても、基本的にはまったく異なる製品である。
Entierは、組み込みデータベースとしては比較的新しい製品である。これを一言で総括すると、良い意味で「典型的な組み込み向けDB」といえる。以下のような特徴がそれを物語っている。
最大でも数百kbytesのオーダー。カスタマイズすれば100kbytes程度まで絞り込める。
プログラムからAPI呼び出しの形でデータベースにアクセス。Socketなどを経由してのプロセス間通信は現在未サポート。
ターゲットOSとしてT-Kernel、ITRON、VxWorks、Windows CE、Windows Mobile、Linux、Symbian OSに対応。
SQL92準拠ではあるが、トリガやOuterJoinなど、組み込みのシーンでは使われない機能は未サポート。
見てのとおり、(汎用RDBを志向したLinterを除くと)これまで連載で紹介してきた製品とほぼ重なる性質を持つ。ライブラリ形式であるが故に、1つのシステムの中で動く複数のプロセスが別々のEntierを持つという構成も当然可能である。組み込みデータベースとして過不足ない機能を持っているが、当然ながらこれだけではほかの製品との差別化はできない。
これに対するEntierの回答が、次に説明する2つの検索機能と3つの内部アーキテクチャである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.