国内の官公庁や法人向けにシステムソリューションを展開するパナソニック システムソリューションズ ジャパン(PSSJ)の公共システムセンターでは、公共市場向けのインフラシステム事業を扱っている。事業の特徴は、「1件名1仕様」と「逆T字型モノづくり」だ。
2018年3月に創業100周年を迎えたパナソニック。家電メーカーとしてのイメージが強かった同社だが、現在はB2Bビジネスへの注力を鮮明にしている。また、コネクティッドソリューションズ(CNS)社を中心に、「モノ売り」から「コト売り」へのシフトも進めようとしている、
家電をはじめ「モノ売り」を重視してきたパナソニックの中で、国内の官公庁や法人向けにシステムソリューション=「コト売り」を展開したきたのが、CNS社傘下のパナソニック システムソリューションズ ジャパン(PSSJ)だ。PSSJが手掛けるシステムソリューションの1つである、公共市場向けのインフラシステム事業を扱う「公共システムセンター」を取材したので紹介しよう。
公共システムセンターが手掛けているのは、国内の官公庁や自治体向けインフラシステムの開発と保守サービスだ。パナソニックの佐江戸事業所内にある中核拠点では、製品の開発・設計や生産を行っている。
パナソニックの公共インフラ分野の事業展開は、1950年に提供した警察無線から始まった。それ以降、防災無線、交通管制システム、ETC、パスポートリーダーなど扱うシステムを広げ、自治体、警察、道路、官公庁を主な顧客としている。
現在の事業領域は「ITS(高度道路交通システム)」「無線通信」「公共セキュリティ」「水利システム」の4つに大まかに分かれている。PSSJ 公共システム本部 執行役員 公共システムセンター 所長の伊藤伸一氏は「4つの事業領域の中核になっているのは、1950年の警察無線から積み重ねてきた無線通信技術と、公共分野の各業界におけるノウハウを基にしたシステム制御技術だ。社会の安全・安心を支えるため間違いが許されない公共システムは屋外での利用が基本であり、それを少なくとも10〜20年以上の耐久性を確保するとともに、日本全国で保守サービスを展開するには、まさにノウハウが重要になる」と語る。
公共システムセンターの事業特性を表しているのが「件名単位」での事業推進だ。同センターが扱う“システム”は1件ごとに内容が異なる。例えば、ETCの場合、高速道路会社が同じでも、ETCを設置する料金所が異なるとその構成も変わってくる。「1件名1仕様」(伊藤氏)というわけだ。
また納入するシステムは、全て自社で製造した製品で構成しているわけではない。伊藤氏は「パナソニックとしての特徴を出せるハードウェアは自社で開発・製造するが、システムは多くの買入品やソフトウェアで構成することになる。そしてそれらを組み上げるシステムアップとシステムテスト、顧客の立会検査も重要であり、システム出荷後の施工や保守サービスも必要になる」と強調する。つまり、システム件名推進フローを横方向として、特徴を際立たせる自社製品の商品開発が縦方向に組み込む「逆T字型モノづくり」(同氏)が、公共システムセンターの強みを支えているのだ。
また、もう1つの事業特性となるのが「10年超の長期保守体制構築」である。数年単位でのリースが中心の民間向けシステムとは異なり、公共システムは買い取りになる。ほとんどの公共システムは10年以上の稼働が前提になっており、その間、保守部品やソフトウェアのサポートも求められる。「公共インフラを事業として手掛ける上での宿命」(伊藤氏)だが、そのための苦労も多い。先述した通り、自社で開発・製造している製品だけでシステムを構成していないため、2〜3年で供給が終わる他社買い入れ品については「10年超の保証期間」はサポートできない。それらを、新しい買い入れ品でもシステムがきちんと動作するような体制も必要とされる。
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