デンソーの子会社であるオーバスは、POSIX仕様準拠リアルタイムOS「AUBIST OS POSIX版(仮称)」を開発していることを発表した。自動運転車に採用される高性能なインテリジェントECUがターゲットで、車載ソフトウェア標準であるAUTOSARの次世代規格AUTOSAR Adaptive Platformに対応している。
デンソーの子会社であるオーバスは2018年1月11日、POSIX仕様準拠リアルタイムOS「AUBIST OS POSIX版(仮称)」を開発していることを発表した。自動運転車やコネクテッドカー、ADAS(先進運転者支援システム)など、高度な車載システムに採用される高性能なインテリジェントECUがターゲットで、ヘテロジニアスなハードウェア構成の分散コンピューティングを可能にするスケーラビリティと、車載システム基準を満たすような高信頼性の実現を目指すとしている。
自動運転車をはじめとする次世代の車載システムは、多数のエッジノードやクラウドと通信し、車両の状態や周囲の道路状況などのさまざまなデータを車内外のセンサーから取得したり、AI(人工知能)を利用して次の判断、操作を計算したりするなど、多くのデータや演算を高速に処理する必要がある。AUBIST OS POSIX版は、そういった処理に対応可能なマルチコア/メニーコア技術を活用した高性能なプロセッサを搭載するインテリジェントECUに最適な、POSIX仕様準拠リアルタイムOSである。
車載ソフトウェア標準であるAUTOSARは、従来のECUとはアーキテクチャが異なるインテリジェントECUに対応した次世代規格としてAUTOSAR Adaptive Platform(AP)を策定している。APはPOSIX系OSの利用が前提となっており、AUBIST OS POSIX版もAPへの適用を視野に入れた開発が進められている。この他、自動車向け機能安全規格であるISO 26262への対応も予定しているという。
AUBIST OS POSIX版は、全てのコアにマイクロカーネルを配置する分散型マイクロカーネルアーキテクチャを採用。これにより、コア数の違いに加え、オンチップフラッシュマイコンやGPU、FPGAなどアーキテクチャが異なるヘテロジニアスなハードウェア構成をサポートするスケーラビリティを実現しているとする。さらに、独自技術「セミプライオリティベーススケジューリング」を搭載することで、メニーコアで期待される高いパフォーマンスとスケーラビリティに加えて、車載システムに不可欠なリアルタイム性を両立したとする。APでは、あらかじめ計画された動的な挙動を許容する「Planned Dynamics」への対応が必須だが、このセミプライオリティベーススケジューリングによって可能になるもようだ。
オーバスでは、AUBIST OS POSIX版に加え、アプリケーション開発ツールや、マルチコア/メニーコア向けソフトウェア並列化ツールなどの各種ツールを整備していく計画である。
オーバスは、デンソーとイーソル、NEC通信システムの3社が2016年4月に設立した、車載システムの基盤ソフトウェア(BSW:Basic Software)とその関連ツールの開発を行う合弁会社で(関連記事:国産AUTOSAR準拠BSWに第3の選択肢、デンソーが子会社「オーバス」を設立)、51%出資するデンソーの子会社である。今回のAUBIST OS POSIX版の特徴は、イーソルの次世代リアルタイムOS「eMCOS」とほぼ同じだ(関連記事:商用リアルタイムOSのPOSIX仕様準拠プロファイルを発売)。このため、eMCOSをベースに開発が進められているとみられる。
なお、オーバスは、「第10回 オートモーティブ ワールド」(2018年1月17〜19日、東京ビッグサイト)に出展し、AUBIST OS POSIX版を適用したAPのデモ展示などを行う予定だ。
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