量産車にもすでに適用されている車載ソフトウェアの標準規格「AUTOSAR」。しかし現在も、AUTOSARとそれを取り巻く環境は刻々と変化している。本連載では、2011年に好評を博したAUTOSARの解説連載「AUTOSARとは?」の筆者が、2015年現在のAUTOSARの仕様や策定状況、関連する最新情報について説明する。
前回、AUTOSARに関する連載「AUTOSARとは?」の執筆の機会を最初にいただいたのは2011年2月。それからはや4年が経過した。
その間、東日本大震災、各種高度運転支援機能の急速な普及、自動車向け機能安全規格であるISO 26262の正式発行、自動車のセキュリティに対する注目度の変化、国際情勢の急激な変化など、世の中は大きく変わった。
AUTOSARにおいても多くの変化があった。当然ながら、情報の寿命は変化により大きく左右される。Google日本語版でキーワード「AUTOSAR」を検索すると、本稿執筆時点(2015年6月17日)でも、既に4年前の記事であるにもかかわらず前回の連載が上位に出てくる。大変光栄なことではあるが、それと同時に情報の寿命の観点からは必ずしも好ましいとはいえない。
そのため、かねて情報更新の提供の機会を探していたが、幸いにして、昨年(2014年)、信頼性学会誌上にてAUTOSARおよびISO 26262関連論文の執筆の機会をいただき※1)、さらにはMONOistの編集担当より本連載のお声掛けをいただいた。当初は、セキュリティ関連についても触れてはどうかとアドバイスをいただいたが、そちらはイータス(ESCRYPT)における同僚であるエキスパートと分担し並行で連載を行うこととなった。近日中に公開予定ということなので、そちらもぜひご覧いただきたい。
さて、「AUTOSARとは?」という問いに対しては、さまざまな切り口での答えがある。この数年で多くの経験を積み、切り口そのものも、またお答えするための引き出しも増やせたと思う。本連載は、その整理や棚卸しの絶好の機会である上、連載回数についても「何回でも良い」というありがたいお言葉も頂戴している。
現時点では連載回数は未定であるが、今回はまず、AUTOSARそのものの現在の姿や、それを取り巻く全体的な状況を整理していきたい。
なお、私自身にも公私両面で大きな変化が訪れた。いまだに名刺上の所属企業をご覧になって驚かれる方は多いが、企業を移っただけではなく、安全およびそれに関連するものについて学び直す機会も得た。自身では、さまざまな変化を通じての「ものの見え方」の変化に日々新鮮な驚きを感じている。この変化によって、前回の連載とは違う何かを、今回の連載で読者の皆さまにお届けできれば幸いである。
※1)櫻井剛:自動車の組込みソフトウェアの現状:AUTOSARおよびISO 26262(組込みシステムの信頼性・安全性、日本信頼性学会誌「信頼性」, Vol.36, No.4, pp.197-205(2014.7)<http://ci.nii.ac.jp/naid/110009833384/>
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