JDIはVR HMD専用TFT液晶の開発において、精細度803ppiを実現すると発表。VR HMDの小型・軽量化への要求の高まりと、2020年の5G通信サービス開始による大容量無線通信の実現を見据え、同社では高精細な画像表示技術に取り組む。
ジャパンディスプレイ(JDI)は2017年12月12日、VR(Virtual Reality)ヘッドマウントディスプレイ(HMD)専用TFT液晶ディスプレイを開発したと発表した。同製品のサイズは3.6インチで、解像度が1920×RGB×2160dpi、精細度が803ppi。応答速度は4.5ms、リフレッシュレートは90Hz。2018年度中の量産を予定している。
今後は2020年をめどに、精細度に関しては1000ppi、サイズについても2インチ台を目指す。応答速度は3ms、リフレッシュレートは120Hzまで対応する(90Hzと併用)。2020年は5G通信のサービスの開始が予定されている。5Gであれば、VRで扱うような大容量データも無線通信を介してリアルタイムに受け取れるようになる。そのような背景から、将来は超高精細なVR専用液晶ディスプレイを搭載したVR HMD機器の市場が拡大すると同社では見込み、開発に取り組んでいる。
VR HMDは頭部に装着することからも小型化、軽量化のニーズは高く、筐体サイズや重量にかかわるディスプレイサイズの縮小が望まれる。小型化するためには、ディスプレイとVR用レンズの距離を近づけることが有効だが、それだとレンズ越しの画像が拡大して解像度が粗くなる。同社では、高精細化によって、解像度を維持したままディスプレイサイズを小型化することを狙い、上記のディスプレイの高精細化技術の開発に取り組んでいる。
同社子会社のJOLEDの有機EL技術は印刷式でありVR用途で臨まれるような高精細化が望めず、一方、高精細化に有利であるTFT-LCD技術の利点を生かす。
同製品ではリフレッシュレート(垂直同期周波数)の改良も目指す。リフレッシュレートは単位時間当たりにどれだけデータをリフレッシュするかを示す。人の目がモノを追う際は滑らかに動くため、いわゆるコマ送り状態であるVRの画像の動きがそれと遅れて追従するため、脳がストレスを感じる。また動画がぼやけて見える。リフレッシュレートを高めることで、画像の動きを目の滑らかな動きに近づけることで、ストレスの少ない自然なVR閲覧を実現する。
長いレイテンシ(遅延)はVRコンテンツ閲覧時の酔い(VR酔い)の原因となる。リフレッシュレートが高まることで、ディスプレイ書き込みから反応までの時間が短縮でき、レイテンシの低減に寄与する。
「各調査機関で実施されているVR関連の市場調査については、現在、市場が立ち上がりかけということもあって、各社で結果にばらつきがある。とはいえ今後、急激に需要が伸びることに期待している」(ジャパンディスプレイ ディスプレイソリューションズカンパニー ディスプレイソリューションズ第1事業部 商品部 応用技術1課 課長 原山武志氏)。同社ではLTPS TFT-LCDの開発経験を生かした、VR専用の高精細ディスプレイ分野においてリードしていきたいとしている。
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