FabFoundryの創業者・関信浩氏がハードウェアスタートアップ企業の動向を探る本連載。第3回は、ハードウェア開発を目的としたクラウドファンディングによる資金調達をやめ、代わりにスマホアプリの提供へと切り替えたハードウェアスタートアップのピボット事例を紹介する。
ハードウェアスタートアップにとって、コンセプトや試作品への共感から資金調達できる「クラウドファンディング」は、もはやなくてはならないサービスです。一方で、多額の資金を調達したハードウェアプロジェクトが、製品を量産できずに頓挫するという現象もここ数年目立つようになってきました。いわゆる「量産化の壁」と呼ばれるものです。
製品が市場に受け入れられるか(=プロダクトマーケットフィット)を検証するには、プロトタイプや初期製品が必要です。しかしWebサービスやアプリと異なり、ハードウェアでは検証のための製品を作るのに、多くのリソース(時間やお金)がかかってしまいます。これがハードウェアスタートアップの成功が難しいといわれる理由の1つです。
この問題に対して、モノづくりにこだわりがある人だとなかなか採用できないであろう、思い切ったアプローチを試しているスタートアップを、米国東海岸から飛び出してご紹介します。
シリコンバレーにあるスタートアップ「Audesis」は、職場などでもコミュニケーションできるヘッドフォンを作ろうとしています。ヘッドフォンに「会話可能」「音楽に集中」などのモードを搭載し、LEDの色で見分けられるようにする他「会話を聞きやすいように音声エフェクトをかける」などの機能が搭載されています。
米国のスタートアップでは、特に若い社員がヘッドフォンを着用しながら仕事をしている姿をよく見かけます。これは好みの音楽を聞いて仕事に集中するためですが、それ以外にも電話をしたり、製品デモやニュースを聞いたりなど、ヘッドフォンを使う局面は少なくありません。
一方で、ヘッドフォンを着用している人に話しかけていいのか悩むことも多々あります。仕事に集中しようとしているときに話しかけられると、生産性が落ちてしまうことがあるからです。
そこでAudesisは、仕事に集中するための「ノイズキャンセリング機能」(周りの雑音が聞こえにくくなる機能)に加えて、ヘッドフォンを外さなくても周囲の会話が聞こえやすくなる機能や、会話の相手の声だけが聞き取りやすくなる機能を実装した、独自のハードウェア製品(ヘッドフォン)を作ろうと試みました。
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