ウフル 専務執行役員の古城篤氏は「分断のないAI活用」について講演を行った。デバイスからクラウドへ、全てのモノがインターネットへつながるIoTが普及し始めているが、実際のところはデバイス間、クラウド間の連携がスムーズではない。そして、あるデバイスに関わるIoT関連の機能を個別にクラウド化していくとストレージや通信量が無限に増えていく――そんな新たな課題が立ち上がっている。
ウフルのオーケストレーションサービス「enebular」では、これらの課題を解決しようとしている。古城氏は「クラウドで良いところはクラウドで。エッジ側でいいならエッジ側で。enebularではデータフローの中で適材適所に配置を行うことでセキュリティを確保し、通信料やストレージも最小限に抑えることができる」と強調する。
さらに同社は「自律協調分散型」の社会を目指していくという。自律協調分散型とは、モノ同士がクラウドを介さなくてもエッジデバイスがデータを直接判断、通信することで素早いレスポンス、通信量の削減、高いセキュリティを実現することだという。「これからのIoT、AIの開発に際し、PDCAサイクルをより早く回していくことを追求した結果、enebularというプラットフォームに行き着いた。オーケストレーションと名付けたように、IoT、AIの環境において全体最適をいかに実現できるのか。今後もパートナー企業とのコラボレーションや実証実験を進めていく」(古城氏)としている。
最後に講演を行ったのは、セミナーを主催する菱洋エレクトロでIoT営業本部 営業企画部長 横山孝徳氏である。半導体ビジネスを中心とするエレクトロニクス商社として成長を遂げてきた同社だが、近年はHPEやインテル、マイクロソフト、NVIDIAなどの正規代理店という立ち位置を生かして、AIやIoT、ICT関連ビジネスを拡大しており、今後のさらなる成長を見据えている。
横山氏は、IoTやAIに関わる開発を行う上でのポイントとして「安全性」「連携性」「拡張性」の3つ挙げた。安全性はセキュリティをどのようにして担保するか、連携性はデバイス同士のつながりをいかに担保するか、拡張性はどれくらい適用範囲、機能、精度を拡張していけるかが課題になる。「これら3つのポイントは、開発側だけでなく、IoTやAIを活用する現場側でも検討すべきだ」(同氏)。
例えば、東急電鉄と実施した踏切事故防止を目指す実証実験や、ANAのビジネスチャットツール開発は、現場にある課題を出発点としてソリューションの提案、実行を果たした事例だという。横山氏は「『企業が持つ課題』と『活用する各社のデバイス・サービス』を俯瞰して見ることができる専門商社の立ち位置を最大限に生かし、モノの提供だけでなく、構築・設計・開発・実装・運用の各ステージを支援することで、エンドユーザーの利益に直結するビジネス開発に貢献したい」と講演を締めくくった。
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