「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

自動車大国日本が誇る「つながるクルマ」は何が間違っているのかTU-Automotive Japan 2017レポート(1/3 ページ)

「TU-Automotive Japan 2017」で語られたメインテーマの1つが「コネクティビティとデータ活用」だ。日本の自動車メーカーは、海外勢に負けじと、インフォテインメントやテレマティクスと関わるサービスを中核とした「つながるクルマ」の開発に注力しているが、そこにはさまざまな課題があるという。

» 2017年11月10日 11時00分 公開

 2017年10月17〜18日の2日間、東京都内で自動車業界の今後に向けた取り組みを語るカンファレンス「TU-Automotive Japan 2017」が開催された。「Connected Car+自動運転の進化から生まれる次世代サービスを探る」をテーマに、午前中は自動車専門アナリストやモビリティサービスを展開する各社による基調講演、午後は「車載システムとセキュリティ」「自動運転時代のコネクティビティとデータ活用」(以上、初日)、「次世代コネクティッド・自動運転技術」「スマートモビリティと次世代車の展望」(以上、2日目)の2つのテーマに分かれて現状や課題、将来展望などについてさまざまな講演が行われた。

 本稿では、今回のカンファレンスのメインテーマの1つであった「コネクティビティとデータ活用」について取り上げたい。

「月額利用料でユーザーからお金を取ることを考えてはいけない」

Strategy Analyticsのロジャー・ランクトット氏 Strategy Analyticsのロジャー・ランクトット氏

 冒頭、米国の調査会社であるStrategy Analyticsのロジャー・ランクトット(Roger Lanctot)氏より、日本はクルマへのコネクティビティ搭載およびそこから得られるデータ活用の重要性に対する認識が遅れているとの指摘があった。

 日本の自動車業界が世界の自動車業界と比べて欠けているもの、それは「クルマへのコネクティビティの搭載」と「インフォテインメントのコモディティ化」であると同氏は指摘する。

 まずコネクティビティについてだが、自動車メーカーにとってコネクティビティは、車両からのデータを吸い上げるための重要な手段である。しかし通信コストの負担は自動車メーカーにとって長年の課題であり、何とかして負担を軽減したいと模索している状態が続いている。

 一方で通信事業者は自動車をスマートフォンに変わる「新たなデバイス」と位置付け、自動車へのコネクティビティ搭載に注力している。しかしパイプ提供(いわゆる土管)で終わりたくない通信事業者は、コネクティビティ提供をきっかけにマネタイズの領域を模索しているのが現状である。

 その際、両者がターゲットとするのはユーザーだが、ユーザーからしてみれば、1人1台スマートフォンを持つ時代において、クルマへのコネクティビティ搭載の意義を見いだすのも難しく、当然のことながら新たにお金を払うという発想もない。事実、国内外を問わず、インフォテインメントサービスを無償提供している間であればユーザーは利用するものの、無償期間終了後のアクティベーション率については各社とも口を濁しており、高くないものと推察される。

 このように各社ともコネクティビティにかかる費用をユーザーに転嫁する方法を検討してきたが、ランクトット氏は「月額利用料でユーザーからお金を取ることを考えてはいけない」と断言し、発想の転換の必要性を指摘した。

 例えばコネクティビティにより車両の状況をモニタリングできるようになる。これにより自動車メーカーは、クルマのライフサイクルを管理できるだけでなく、ソフトウェアアップデートなどによりリコールを防ぐことも可能となる。リコールにより生じる損害が莫大であることを考えると、自動車メーカーはコネクティビティによる最大の恩恵を既に享受できていることになる。それでもコネクティビティに対する費用負担をユーザーに求めるのであれば、ユーザーがお金を払ってもいいと思うような価値を提供する必要がある。

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