走査型プローブ顕微鏡向けの熱ダメージレスな計測技術を開発医療機器ニュース

日立製作所は、物質の表面状態を拡大観察する際に用いる走査型プローブ顕微鏡向けの新しい測定プローブによる計測技術を開発した。物質に熱ダメージを与えることなく計測できる。

» 2017年10月26日 15時00分 公開
[MONOist]

 日立製作所は2017年10月10日、物質(試料)の表面状態を拡大観察する際に用いる走査型プローブ顕微鏡向けの新しい測定プローブによる計測技術を開発したと発表した。レーザー光を測定プローブの上方に照射し、そこから波及/発生した局在的な光スポットを用いて物質を計測する技術で、物質に熱ダメージを与えず計測できる。

 同社は、走査型プローブ顕微鏡において、裏面に金薄膜を持つ薄膜シリコーンからなる新しい測定プローブ構造を考案。物質へのレーザー光の直接照射を回避する技術と、高効率な光スポットを生成する技術を開発した。その結果、物質にレーザー光を直接照射せずに物質の解析(ラマン散乱光検出)が可能となった。測定時に物質近くにある測定プローブ先端へのレーザー光の直接照射を回避するため、熱のダメージを受けず、組成や分子構造を計測できる。

 物質へのレーザー光の直接照射を回避する技術では、金(厚さ約50nm)の薄膜をシリコーンからなる測定プローブの裏面に付着させた後、FIB(Focused Ion Beam)を用いて、シリコーンの厚みを厚さ250nmに薄膜化する加工を施した。薄膜化により、測定プローブの上方に照射したレーザー光(波長660nm)はシリコーン薄膜を透過し、プローブ裏面のシリコーンと金の界面まで到達する。

 高効率な光スポットを生成する技術では、プラズモンが測定プローブ先端まで波及することで、近接場光スポット(径約50nm)を発生させることが可能となった。今回開発した測定プローブによる計測技術を利用した実証実験では、金属基板上の有機物質(4-PBT)の積層膜を測定し、ラマン散乱光を高感度に計測できた。

 これらの技術を適用し、熱のダメージを受けずに材料解析を実現。同社は今後、最先端デバイスやナノレベルの機能材料を含む製品の熱ダメージレスの組成/形状解析に必要な計測装置向けに同技術の実用化を図るとしている。

 高機能材料を構成する物質の解析は、走査型プローブ顕微鏡を用いて測定プローブの先端に強いレーザー光を照射し、数10nm以下の光スポット(近接場光)を発生させて行う。しかし、レーザー光の照射を回避しながら、熱に弱い有機物質や生体物質を高感度に解析することは困難だった。

photo 本方式の測定原理 出典:日立製作所
photo 有機物質積層膜を測定した結果 出典:日立製作所

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