具体的に、完全自動化ラインはどのように実現したのだろうか。トナーの生産は主に以下の手順で行われる。
従来の生産ラインも「成形」や「充填」などの主要な生産工程は専用の装置で自動化して行っていた。しかし、自動化が難しかったのが「検査」や「部材の取り付け」など、その間の工程だ。
植原氏は「トナーの生産ラインには10人の作業員が必要だった。その内約半分がトナーの口にシールを張り付けたり、ふたを閉めたりするような、サブアセンブリーや部材の取り付けなどの工程にかかっていた。これらの作業は微妙なさじ加減が必要で従来は費用対効果の面で完全自動化が難しい領域だった」と述べている。
新たな自動化ラインでは、これらの工程を産業用ロボットを活用し自動化することに成功。従来も産業用ロボットそのものは活用していたが、産業用ロボットや自動化設備に最適化した生産ラインとすることで間の人手工程を全て排除することに成功した。
最終的に、10人いた作業員は1人となり10分の1に削減することに成功。作業員は基本的に部品や部材の投入や確認作業だけを行う形となっている。
今回完全自動化ラインを稼働させたのは、1ラインだが、第7工場には6ライン分のスペースが用意されている。今後は、生産量拡大に合わせて無人化ラインを拡大し効率的な生産拡大を進めていく方針である。「生産作業そのものは無人化に成功している。生産スピードそのものは従来と大きく変わらないが、作業員が10分の1になり、24時間稼働を可能としつつ品質の安定化を確保できている。2020年までに生産量を2倍に拡大する目標を示す中、今後人員を大きく増員しなくても生産量を効率的に増やすことが可能になる」と植原氏は述べている。
さらに完全自動化ラインにより生産性を向上させたことで「中国など海外で生産するよりもコスト競争力がある状態を作ることができた」(植原氏)と国内生産の新たな可能性についても示唆した。
現在でも生産管理システムなどを活用しているが、今後は自動化ラインからの情報をより多く活用し、品質やラインの稼働状況など工場内のさまざまな情報を見える化できるようにしていく方針。収集したデータを自動的にフィードバックするなど、製造業におけるIoTを活用したスマートファクトリーへの取り組みを広げるという。
「現場だけの見える化や、モノの動きを把握する生産管理システムについては現在も活用しているが、これらの情報を統合的に管理できるような仕組みを作っていきたい。製造系、生産技術、情報システム系が一体で取り組んでいく。まずはIoTを活用し設備の稼働状況をセンターからでも監視でき、安定的に稼働できるような仕組みに取り組みたい」と京セラドキュメントソリューションズ 玉城第2製造部責任者 林泰弘氏は述べている。
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