PLA、PEI、ABS、そしてABSライク? 3Dプリンタ材料いろいろママさん設計者とやさしく学ぶ「機械材料の基本と試作」(5)(5/6 ページ)

» 2017年08月10日 13時00分 公開

インクジェット方式は「〜みたいな?」材料

 それでは、インクジェット方式での代表的な材料について解説いたしますね。まず、インクジェット方式で使われる材料は全て「合成品」になります。ですから「本物」と区別して○○○ライクとしているのです。ずわいがにのカニ肉とカニかまぼこの比較でイメージするとよく分かるかと思います。

 ライクとは英語の「Like」で、訳すと「類似」とか「あたかも」などと出てきます。今どきな感じで表現するなら「〜的な?」「〜みたいな?」といったところでしょうかね。

ABSライク

 すなわち「ABS的な」「ABSみたいな」材料です。あくまでも「ABSに似せたモノ」なので本物のABS並みの強度はありませんが、耐熱性や靱性を求める試作やABS製品のシミュレートに用いられます。断面を見ると二層になっているのが分かりますね。表層は耐熱性の高い材料、内層は靱性の高い材料のコンビネーションになっています。ちなみに、このABSライクを応用した金型が、最近注目を集めている「デジタルモールドシリーズ」です。

PPライク

 PP(ポリプロピレン)ライクは、ABSライクと同じくPP製品のシミュレート用によく使われる材料です。本物のPPに近い色調と物性を持っていて、インクジェット用材料の中では比較的高靭性で、耐衝撃性に優れています。

ゴムライク

 まさにゴムのように柔らかく自在に屈曲できる材料で、ゴム成形品の試作にぴったりです。材料の混合割合によって硬度を調整することも出来ます。

 さて、次に光造形についてです。実は、光造形方式は3Dプリンタの中でもっとも長い歴史を持つ方式で、筆者がかつて初めて見たラピッド・プロトタイピング装置が、コレです。

 光造形の光とはUVのことで、UVを当てると固まる液体樹脂に紫外線レーザーをあてながら一層ずつ硬化させていきます。材料の多くは、エポキシ系の液体樹脂です。これを満たした槽の上からUVレーザーで造形品のデータを照射して1層目を硬化させます。次にステージを1段下げて同じようにUVレーザーを照射、そして一段下げて……を何層も繰り返して造形品を完成させます。完成した造形品が槽の中からせり上がってくる様子は、ちょっとカッコイイのです。精度の高い造形品が作れる一方で、設備の価格が他の造形方式と比較してかなり高価です。

光造形機

 この方式での造形品は強度的に実用には適さず、これをマスターモデルとしてシリコンゴムで型を作り、真空注型で複製品を作ることがほとんどです。注型材料には主にウレタン系樹脂とABSライクが用いられ、塗装やめっき仕上げも可能です。

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