民間初の宇宙到達を目指すロケット「MOMO」、その挑戦の意義を探るもうホリエモンロケットとは呼ばせない(3/4 ページ)

» 2017年07月25日 11時00分 公開
[大塚実MONOist]

拡大が期待される超小型衛星市場

 ISTが事業を継続していくためには、まず超小型衛星の打ち上げ市場に食い込んでいく必要がある。同社はMOMOの商業化も目指す考えだが、市場としてより大きいのは、弾道飛行ではなく、衛星打ち上げのビジネスである。同社がメインとして狙うのもそこになる。

 超小型衛星というのは、大体100kg以下くらいの衛星のことだ。明確な定義があるわけではないので、人によって区分はやや違うかもしれないが、数tクラスの大型衛星に対し、500kg程度の小型衛星があって、それよりもかなり小さいため、小型衛星とは別に超小型衛星という言い方になっている。

 近年、エレクトロニクスの進歩により、高性能な電子部品の小型化が進展。これにより、高性能で実用的な超小型衛星が開発できるようになった。日本では、衛星ベンチャーのアクセルスペースがウェザーニューズから受注した10kg衛星の打ち上げを2013年に実施。翌2014年に打ち上げた60kg衛星は、現在も軌道上から観測画像を送り続けている。

アクセルスペースの60kg衛星「ほどよし1号」 アクセルスペースの60kg衛星「ほどよし1号」。大きさはわずか50cm角だ

 とはいえ、超小型衛星は、1機だけの性能では、基本的に大型衛星には敵わない。例えば、地表を撮影するときの分解能などは、口径サイズによる理論的な制約もあったりするので、どうしても大型衛星の方が有利だ。しかし、コストが圧倒的に安いので、同じ予算であれば、大量に衛星をばらまくことができる。

 このような運用形態は「コンステレーション」と呼ばれる。軌道上に多くの衛星を配置すれば、撮影頻度はそれだけ向上する。1日に何度も撮影できれば、準リアルタイムのGoogle Earthが可能になるわけだ。米国ではすでにベンチャーによる構築が始まっている。日本でも、アクセルスペースが50機による地球観測網の構築を計画しているところだ。

 また、超小型衛星によりプロジェクトの総コストが劇的に下がった結果として、宇宙でもチャレンジしやすい環境が生まれた。従来は、収益が確実に見込まれる地球観測や通信/放送などの限られた分野での利用にとどまっていたが、現在はベンチャーが人工流れ星、デブリ回収、宇宙葬など、さまざまなアプリケーションを考えている。

 これは、メインフレームの時代から、PCの時代になり、利用が一気に多様化した状況に似ているように思う。さすがにまだ個人で衛星を所有するような金額ではないものの、普通の企業が“マイ衛星”を持てるようになれば、これまで考えられなかった利用方法も出てくるだろう。

 超小型衛星は単に価格を下げただけではなく、宇宙利用の世界に相変化のようなものをもたらそうとしているのかもしれない。

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