コネクテッドカーによって自動車データが流通する未来に向けて、転換期を迎える自動車業界。米国ミシガン州で開催された「TU-Automotive Detroit 2017」のレポートを通してその激動をお伝えする。次代のアマゾン、ウーバーといわれる、自動車データ流通で注目を集めるベンチャー・Otonomo CEOのベン・ボルコフ氏へのインタビューも行った。
2017年6月7〜8日、米国ミシガン州ノバイで自動車業界専門のカンファレンス「TU-Automotive Detroit 2017」が開催された。今回で17回目を迎える同カンファレンスは、自動車関連企業や自動車にサービスを提供するIT企業などが登壇し、自動車業界の今後について議論する場となっている。関連各社のソリューション展示エリアも設けられており、参加企業は150社に上る。
カンファレンスは「コネクテッドカー」「自動運転車」「スマートシティー」「サイバーセキュリティ」「ユーザーエクスペリエンス」「ビジネス戦略」など複数のテーマが設定され、2日間にわたり平行して開催される。またベンチャー企業による最新技術を発表するステージも設けられるなど、モーターショーとは異なり「自動車のITショー」という様相だ。
本稿では、同カンファレンスのレポートを通じて、コネクテッドカーによる自動車データの流通が自動車業界に激動をもたらしつつあることをお伝えしたい。
今さらではあるが、同カンファレンスにおいても自動車業界が転換期にあることが語られた。その中でキーワードとなったのが「エコシステム」だ。自動車業界はこれまでのサイロ化されたサプライチェーンモデルから脱却し、データを活用したエコシステムの構築に転換しつつあることが訴えられた。
エリクソン(Ericsson)のオートモーティブ部門でGlobal Automotive Services VPであるClaes Herlitz氏は、コネクティビティが自動車業界に新たなビジネスモデルをもたらすが、実現のためには自動車業界にとどまらず、複数の業界をまたいだエコシステムを描く必要があると主張した。「すぐに大きな収入にはつながらないかもしれないが、ロングテールを考慮することで、結果的にブランドへのロイヤリティーとイノベーションをもたらすことになる」としている。
その例としてエリクソンは、システム構築における成功事例を披露した。同社は、非自動車関連パートナーに対しフリート管理ツールの構築を5000米ドルで依頼したところ、わずか3週間でサービスを作り上げてきたそうだ。しかし実際には、「依頼する前の段階でデータの扱い方やAPIの開発の仕方、ビジネスモデルなど一通り教え込み認識を合わせることにかなりの時間をかけて重ねた。そのことが重要だ」と語った。つまり、自動車メーカー各社が望むスピード感でサービスを提供するには、事前に幅広いパートナーと十分な仕組みづくりを行う必要があり、そこへの投資は必然であることを指摘した。
またシスコシステムズ(Cisco Systems)は、コネクテッドカー時代において、自動車が運輸や小売業など他のさまざまな業界に多大なるインパクトと価値を与えることに目を向ける必要があることを訴えた。例えば、米国においてファストフードの7割の売上がドライブスルーによるものだそうだ。こういった実情を把握しコネクテッドカーと結び付けて価値を生み出すなど、他業界の状況を把握することによってビジネスチャンスは生まれるとしている。このようにIT企業が相次いでプレゼンテーションを行ったことからも、自動車とITが切っても切れない関係となったことが垣間見える。
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