今回の発表に先駆けて、損害保険大手SOMPOホールディングス傘下のSOMPOケアネクストの介護施設への先行導入を実施した。SOMPOケアネクストは、居室見守り介護支援システムにより、転倒/転落、誤嚥、介護事故などを抑制し、事故の未然防止や早期発見による重篤化防止につなげることを目標としていた。
SOMPOケアネクストの事例では、ベッドの床板の中央にマイクロ波センサーを、サイドフレームの下部にマルチセンサーを、居室の出入り口やトイレにドアセンサーを設置した。最も重視していたのは、大きな問題につながる可能性のある離床行動や徘徊(はいかい)の検知である。サイドフレーム下部のマルチセンサーは、要介護者が離床する際にベッドサイドから脚を降ろすことを利用して離床行動を検知できる。マイクロ波センサーで検知する心拍数と呼吸数からは、寝返りの回数に加えて、離床行動も検知可能である。また、居室の出入り口のドアセンサーによって、要介護者の不自然な外出を検知できる。
トイレのドアセンサーは、要介護者が1日に何回トイレに行ったかを本人にヒアリングすることなく把握できる。ドアセンサーは浴室にも適用可能で、浴室内で転倒などによって動けなくなり、長時間入室したままになっている事態などが分かる。小川氏は「高齢者はドアを開放したままトイレや浴室に入ることがある。ドアセンサーは、ドアの開閉を検知するだけでなく、人感センサーも組み込んでいるので、そういった問題にも対応できる」と説明する。
しかし、最も重要なのは、介護スタッフが求める要介護者の情報についてヒアリングした上で、介護施設や各居室の状況に合わせてセンサーを設置し、適切な情報を提供できるようにすることだという。居室見守り介護支援システムには、管理者向けに、各センサーからの情報を詳細に確認できる機能がある。しかし、現場で働く介護スタッフにとっては、そういった詳細な情報よりも、緊急対応が必要な情報だけを知らせてくれる方が使いやすいことも多い。実際に、SOMPOケアネクストでは、緊急対応が必要な状況を検知した場合にだけナースコールで呼び出すという運用を行っていた。
小川氏は「あくまで支援システムであり、100点満点は難しい。ヒアリングによってどこまでできるかを確認し、支援できる範囲を設定する。もしかしたら60〜70点かもしれないが、人材不足に苦しむ介護スタッフの手助けになれば」と意義を強調する。
なお、SOMPOケアネクストは、今後全国の115施設に居室見守り介護支援システムの導入を広げていく方針である。
高齢化が進む国内の介護市場は急速に伸びており、その市場規模は2007年の6.4兆円から、2025年には15.2兆円になるという調査もある。キヤノンMJは、キヤノン本体に頼らない独自成長領域の1事業として介護支援ビジネスに期待を寄せている。そこで、居室見守り介護支援システムを含めた介護支援ビジネスを担当する専門部署を2017年7月に設立することとした。介護施設向けの業務管理システムや、2016年5月に発表した高齢者の運動機能測定を効率化するシステム「ロコモヘルパー」と併せて、2020年の売上高目標を20億円に設定している。
また、Z-Worksとの協業は、映像解析による介護関連ソリューションにも展開を広げていきたい考えだ。キヤノンMJ 総合企画本部 経営戦略部 新規ビジネス推進課の木暮次郎氏は「プライバシーの問題のある居室は今回のシステムで対応できるが、居室以外の共同スペースなどはカメラを用いたソリューションが必須になる」と述べている。
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