「カロセリ」「シート表皮張り替え」、インドネシアの個性豊かな出展社新興国自動車事情(6)(2/4 ページ)

» 2017年05月24日 06時00分 公開
[古庄速人MONOist]

 モーターショー会場でも同様に、欧米ブランドが存在感を見せるため「日本車ばかり」という印象はありません。また勢力拡大を目指す新興国ブランドもあり、国際ショーにふさわしい雰囲気となっています。2016年はインドのTata Motors(タタ)と中国の第一汽車が商用車ブースを展開。また同じく中国の上海通用五菱汽車は、MPVの新型車をインドネシアデビューさせました。

上海通用五菱汽車は、五菱(WULING)ブランドの新型MPVを展示したが、インドネシアでの車名や発売時期などは公表しなかった。ジャカルタ郊外の工場で生産されるということをアピールする目的だったようだ 上海通用五菱汽車は、五菱(WULING)ブランドの新型MPVを展示したが、インドネシアでの車名や発売時期などは公表しなかった。ジャカルタ郊外の工場で生産されるということをアピールする目的だったようだ(クリックして拡大)

人気の中心はMPVとLCGC、そしてSUV

 街でもショー会場でも、大衆の人気を集めるのはMPVと「ローコスト・グリーンカー(LCGC)」です。もちろん世界的な流行となっているSUVも注目を集めてはいますが、自身のライフスタイルに重ね合わせて実用性を考慮すると、多人数が快適に移動できるMPVのほうが魅力的に映るようです。

インドネシアでMPVの人気が高いのは、家族全員が無理なく乗れる3列座席のマイカーを求める消費者が多いため。ダイハツ工業「セニア」はトヨタ自動車でも「アバンザ」の名称で販売され、ベストセラーとなっている(左)。スズキ「エルティガ」はシンプルなデザインだったが、新興国の大衆の欲求に応えるべく存在感のあるフロントエンドに改められた(右)(クリックして拡大)

 ただしインドネシアの道路インフラは都市の中心部を除けば未整備なところも多く、SUVの走破性が望まれているというのも事実。このため「MPVと同じくらい多人数が乗車できるSUV」として、ピックアップトラックと共通のフレームを持つSUVも根強い人気があります。今後は「全席がミニバンなみに快適な多人数SUV」というものが増えることでしょう。

三菱自動車は根強いMPV需要に向けて、7人乗りクロスオーバーモデルのコンセプトカーを公開した。インドネシアではスライドドアを持つ日本的ミニバンも人気だが、それらとは異なったSUV感覚を魅力として訴えている 三菱自動車は根強いMPV需要に向けて、7人乗りクロスオーバーモデルのコンセプトカーを公開した。インドネシアではスライドドアを持つ日本的ミニバンも人気だが、それらとは異なったSUV感覚を魅力として訴えている(クリックして拡大)

 ローコスト・グリーンカーは、低価格で燃費にすぐれた、低環境負荷の車種を指します。これに適合したモデルはメーカーもユーザーも税制優遇が受けられるので、大衆にとってマイカーをぐっと身近なものにする存在です。

 ただし、これに適合するためには排気量や環境性能だけでなく、部品の現地調達率や最低地上高といった、数々の細かい規則をクリアする必要があります。LCGCプログラムの背景には、インドネシアの実情に合った車種を開発する必要をもたらすことで、国内の自動車産業の振興を図るという目的もあるのです。

LCGCには、このダイハツ工業「アイラ」(左)やスズキ「カリムン・ワゴンR GS」(右)のように軽自動車のプラットフォームから発展させたものと、日産自動車「ダットサンGO」やホンダ「ブリオ・サティヤ」のようにコンパクトカーをベースに開発したものがある(クリックして拡大)

安価な小型車づくり

 現在、各メーカーは低価格を実現するために、既存の部品を用いてLCGCに適合する車種を作り出しています。ちなみにLCGCに適合する排気量は980〜1200ccで、これは世界的に見て、乗用車の排気量の下限にあたります。もしインドネシア政府の思惑通りにLCGCの生産が増えてゆけば、同国が安価な大衆車の輸出拠点としての地位を確立する可能性もあるというわけです。

LCGCは国内新車販売台数の押し上げに大きく貢献している。そこでダイハツ工業は、LCGCに適合した7人乗りMPVまで開発した(左)。この「シグラ」は、トヨタ自動車で「カリヤ」として販売されている(右)(クリックして拡大)

 ダイハツ工業やスズキは現在、軽自動車をベースにLCGCを生み出しています。しかし、近いうちにこの構図が逆転して、グローバルに販売できるリッタークラスの車種をメインに開発し、そこから日本だけでしか通用しない軽モデルを派生させるようになるかもしれません。

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