日本自動車研究所(JARI)は、茨城県つくば市の研究所内に自動運転技術の評価施設「Jtown(Jタウン)」を開設した。2014年ごろから「自動運転技術の評価をできないか」という自動車メーカーなどの要望が強くなっており、自動運転技術を評価する施設の重要性が高まりに対応した。
日本自動車研究所(JARI)は2017年3月28日、茨城県つくば市の研究所内に自動運転技術の評価施設「Jtown(Jタウン)」を開設したと発表した。
センサーが苦手とする悪天候や逆光などの環境を再現する特異環境試験場を新設した他、既存の模擬市街路を改修して路車間・歩車間通信の検証実験を行えるようにした。また、複雑な形状の交差点や工事中の道路などを自由にレイアウトできる100m四方の舗装エリアも設けた。
敷地面積は16万m2。投資額は22億5000万円で、このうち15億円は経済産業省から補助を受けた。2014年ごろから「自動運転技術の評価をできないか」という自動車メーカーなどの要望が強くなっており、自動運転技術を評価する施設の重要性が高まりに対応してJタウンを設けた。
運用は2017年4月1日から開始する。既に利用予約が入っており、同年4月後半から利用が本格化するという。
自動運転技術の研究開発において、自動車メーカーやサプライヤ、研究機関などからJARIに対し、「公道で走行する前に安全に走行できることを確認したい」「公道走行実験で明らかになった課題を再現し、対策を検討したい」という声が寄せられていた。そのため、試験条件をコントロールでき、安全に性能を確認できるテストコースが必要となっていた。
JARIのつくば研究所には模擬市街路は設けられているが、これは交通事故の場面を再現するためのもので自動運転技術向けではなかった。自動運転技術の評価に対応するため、経済産業省の平成28年度(2016年度)自動走行システム評価拠点整備事業として採択を受け、評価施設を整備した。
Jタウンは企業や大学、研究機関に貸し出す他、JARIとの共同開発や産学連携の場として自動運転技術の協調領域における研究に利用できるようにする。
自動車業界で中立な立場であるJARIとして「Jタウンを活用して自動運転システムの評価試験の標準化を先導していきたい」(JARI 代表理事 研究所長の永井正夫氏)という狙いもある。また、米国 ミシガン大学のコネクテッドカー向けテストコース「Mcity(エムシティー)」を始めとする欧米の評価施設とも情報交換を密にしていきたいという。
新設した特異環境試験場では、室内で雨や霧、朝日や夕日の強い直射日光、薄暮から夜間の暗さを再現できる。雨粒や水しぶき、水たまり、霧、逆光などが外乱となる中で、信号や標識、先行車や対向車を認識できるか評価する。
建屋は奥行き200m、幅16.5mの大きさで、3車線分の広さがある。LEDまたは電球の信号機が配置されており、標識、歩行者のダミー人形を置くこともできる。
雨や霧は天井に設置した設備で発生させる。雨は、時間降雨量30mm、50mm、80mmの3段階で調整可能。一般的に、時間降雨量が20mmを超えるとワイパーを高速で動作させても車両前方が見にくくなるとされている。降雨エリアは100mごとに区切ることができる。
直射日光は投光機で再現する。照度2万ルクス以上と色温度5000〜2300Kの範囲で調整でき、朝日や夕日といった逆光状態での画像認識技術の評価に対応する。霧発生設備では、粒径7.5μmの霧で視程15〜80mまで再現できる。照明設備は暗闇から照度200〜1000ルクスまで調整可能で、夜間や薄暮の実験に対応する。
以前からある模擬市街路は、通信試験用のインフラを導入した。直線400mの片側2車線の道路に交差点を4つ設け、周波数帯760MHzの路側無線機や、歩行者や車両を検知するセンサーを設置した。交差点の角には見通しを悪くするため2階建て相当の建物がある。これにより、右折待ちなどで死角にいる車両や歩行者の検知や、インフラから情報を配信する運転支援システムの実験を行えるようになる。
信号機は敷地内の管制室から制御でき、「グリーンウエーブ走行支援システム」の検証に対応する。グリーンウエーブ走行支援システムは車両が青信号で通過できるようにドライバーに速度を知らせ、減速や停止・発進のエネルギーロスを削減するものだ。時速30kmで通過すると信号機が全て青になるよう管制室で設定し、光ビーコンを通じて専用の車載器を搭載した車両に時速30kmで通過するよう情報を知らせるといった実験ができる。
100m四方の舗装されたスペースでは、テープ状の白線を自由に引いて評価のシチュエーションを設定できる。見通しの悪い場所での歩行者などの飛び出しを回避する制御や、三叉路や合流レーン、変形交差点、ラウンドアバウトなど特殊な道路形状でも自動運転車が走行できるかどうかの検証をカバーする。自動運転用の地図情報と実際の走行環境が異なる場合の評価も行えるとしている。
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