自動運転システムの開発を目指す「SIP-adus」は2015年9月17日、メディアミーティングを開き、進捗状況について解説した。2020年度までの目標に対して進捗はおおよそ10〜15%ほどで、「膨大なデータのひも付け」が今後の大きな課題となる。
日本の経済・産業競争力を高めるべく、今後重要な10のプログラムに対して府省横断型の体制で取り組みを続ける「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」。「次世代パワーエレクトロニクス」「次世代海洋資源調査技術」などのテーマが並ぶ中、近年話題となっている「自動走行(自動運転)システム」も1つのテーマとして採択されている。
この自動運転システムのプログラムを主導する「SIP-adus」は2015年9月17日、東京都内で第5回目となるメディアミーティングを開き、あらためてプログラムの目標や進捗について解説した。
自動運転システムの実現には、道路情報や天気データを含む高精細な“3次元”地図データの構築が不可欠とされている。SIP-adusではこのデータベースを「ダイナミックマップ」と定義し、平成26年度(2014年度)から試作検証を行ってきた。SIP-adusのサブ・プログラムディレクターを務めるトヨタ自動車 CSTO補佐 製品企画本部 安全技術企画 主査の葛巻清吾氏は「歩行者の情報から、道路工事情報まで、刻一刻と変化する膨大なデータの“ひも付け”をどう行い、取りまとめるかが非常に重要」と説明する。
平成26年度は、MMS(モバイルマッピングシステム)を搭載した車両を用い、お台場地区にて基盤となる地図情報の生成実験を行ったという。取得したデータは、道路形状や車線などの静的情報が主で、従来の2次元の地図データが3次元になっている程度だ。平成27年度(2015年度)は、この基盤データにより動的な情報をひも付けるべく、フォーマットを決定していくという。「自動車から送られてくる車両位置や車速などといったプローブ情報も、将来的にはひも付けねばならない。地図情報の更新頻度についても検討していく」(葛巻氏)。
また、将来的にダイナミックマップは「国家基盤データ」として活用拡大に期待されている。「防災・減災や社会インフラ維持管理をテーマにしたSIPの他プロジェクトとの連携やパーソナルナビゲーションなど、自動運転のためだけではなくさまざまな領域の基盤データとして共用できるよう、準備を進める」(葛巻氏)。ダイナミックマップ作成には三菱電機、ゼンリン、パスコなどの日本企業が参加し、オールジャパンでの取り組みを進めている。
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