ここからは、「インフォテインメント」「テレマティクス」「Mobility as a Service(移動のサービス化)」「V2X通信」という4つのエリアにおける主要なプレイヤーの動きについて紹介しよう。
1つ目の「インフォテインメント」の市場は、単にドライバーに情報やコンテンツを提供するだけでなく、自動運転時代を見据え、「車内体験の向上」へと目的が移行しつつある。つまり、クルマの電子化/高度化に伴い、ドライバーが運転のみに縛られていた時間から解放される事によって生じる「新たな時間」をどのように有効活用するか、そしていかに安全かつ快適に過ごすか、という点に主眼が移ってきている。
マイクロソフト(Microsoft)のインフォテインメント市場参入強化の取り組みは、車内をオフィス化する動きであるといえるし、各社が注力するHMI(Human Machine Interface)やパーソナライゼーションは、快適性と安全性を追求する取り組みと考えられる。
そうした中で最も簡単なインフォテインメントといえるのが、スマートフォンの体験を車内に持ち込むというものだ。そしてその市場は、アップルの「CarPlay」やグーグルの「Android Auto」が既に参入を果たしており、多くの自動車メーカーが双方を採用している。
そんな中、フォードが新たな動きを見せている。
フォードは、MWC 2017の会場内2カ所に展示ブースを構えていたが、どちらにもクルマは展示していない。ブースの1つは、VRなどIT技術のサービスへの活用といった展示であり、もう1つのブースでは、CES 2017で発表したばかりのSmart Device Link(SDL)コンソーシアムをアピールしていた。
SDLとは、フォードの車載機向けアプリ構築基盤「AppLink」を、2013年にオープンソース化したもの。SDL対応の車載情報機器とスマートフォンを接続することにより、スマートフォン向けアプリを車載機上で利用できるようになるというものだ。
さらにドライバーのアクセル/ブレーキワークやエアバックの状況など車両情報にもアクセスできることから、CarPlayやAndroid Autoよりも、車両に密接したより深いアプリの構築が可能になる。
もちろん、このような仕組みで広く知られているのは先述のCarPlay やAndroid Autoだが、SDLは車載機のOSもスマートフォンのOSも問わずに利用可能である点が特徴となっている。またグーグルは、Android Autoを通じてユーザーの行動データ収集を狙っているが、SDLのブース説明員によると「(SDLを通じた)ユーザーデータ取得はスコープ外」としており、あくまでもSDLの拡大によるユーザーエクスペリエンスの向上が狙いであるとしている。
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