機械組み立て前の重要な「きさげ」(摺動面のすり合わせ)技術は、組み立て部門の技術者は全員習得している。中島田社長は「きさげは基本中の基本の技術で、組み立て作業では当たり前のこと」と謙そんするが、社内できさげ技術の合格基準を設けて、その合格者を増やしていくなど“伝統の職人技”の継承には積極的だ。
「きさげの技術継承は非常に難しい。練習を続け、経験を積み重ねるのみ。例えばイチローのような優秀な選手のバッティングを解きほぐしてまねしても、イチローにはなれない。安打数や打率に至るまでの経験やノウハウは、イチロー自身が自分に適した方法で築き上げたもの。きさげの技術も人それぞれ。極端に言えば、きさげをどんなカタチ(フォーム)でやろうがその人の自由。結果さえ品質基準に合ったものが出てくればいい。人のクセがあっていいと思うし、実際にそうなっている」(中島田社長)。
同社にはこんなエピソードがある。約30年前に販売した機械がオーバーホールで戻ってきた。当時きさげを担当した技術者(Aさん)は既に引退していたのだが、オーバーホールを担当した技術者はその機械のきさげ模様を見ただけで「ああ、これはAさんのきさげだ」と一目で分かったという。
「その人独自のきさげ模様ができるということは、きさげにクセが表れているということ。品質保証のレベル内で同じパフォーマンスを得ているのであれば、その模様は人それぞれでいい」(中島田社長)。
こういった職人技とともに、設計開発は全て自社内で行い、機械に使用する部品も70%以上を内製するなど、機械精度の向上に向けた取り組みを実施。工場内には最新型の複合加工機やNC旋盤、同時5軸加工・高精度多面加工マシニングセンタなど最新の機械加工ラインが築き上げられており、継承してきた伝統の職人技と最新設備の融合が、オンリーワン技術に結びついている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.