九州大学は、C型肝炎治療薬の効果的な組み合わせを定める方法の開発に成功した。応用数学と実験ウイルス学の融合研究によって、薬剤組み合わせの薬効を定量的に評価できるようになった。
九州大学は2017年2月7日、C型肝炎治療薬の効果的な組み合わせを定める方法を開発したと発表した。同大学大学院理学研究院の岩見真吾准教授、国立感染症研究所の渡士幸一主任研究官と、金沢大学医薬保健学域の小泉吉輝氏、名古屋市立大学大学院医学研究科の田中靖人教授、国立感染症研究所の脇田隆字副所長らの共同研究によるもので、成果は同日、米科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」に掲載された。
同研究グループは、C型肝炎治療薬の抗ウイルス効果を定量的に測定するため、さまざまな薬剤を用いたC型肝炎ウイルスの感染培養実験を実施した。得られた実験データをもとに、数理モデルとコンピュータシミュレーションによって、網羅的に薬剤組み合わせの特徴を解析し、薬剤の組み合わせによるウイルス抑制効果の強さを判定する手法を開発した。
この手法を用いて、現在用いられている薬剤組み合わせの薬効を評価したところ、今後の治療選択肢として有望な3剤の組み合わせでは、現在日本で主流の2剤併用治療と比較して、大幅に薬剤耐性ウイルスの出現リスクを下げられることが示唆された。
今回、国内初となる応用数学と実験ウイルス学の融合研究によって、C型肝炎の治療法に新たな可能性が見いだせた。今後、それぞれの薬剤の利点を生かし、欠点を補完した最適な組み合わせの薬剤が開発されることで、C型肝炎治療の一層の進展が期待できる。
C型肝炎に対しては、現在10種類を超える薬剤が利用可能となっており、治療が革新的に進歩している。同時に、複数の薬を組み合わせる多くの治療選択肢の中から「最も良い組み合わせ」を見つけなくてはならないという新しい課題も発生していた。
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