現在同社が力を入れているのは、CMOS技術を用いて距離情報を取得することができるTOF(Time of Flight)イメージセンサーである。光の到達速度で距離を計測するTOFは、複雑な計算なしに距離情報を直接取得できることが最大の特徴。しかもCMOSならば、「面」で一度に多くの距離情報を得ることができる。川人教授が15年以上前から研究開発を続けてきたもので、青山氏は「いろいろな課題が解消され、かなり実用化に近づいてきた」と言う。4つ目の同社ブランド製品となる日もそう遠くはなさそうだ。
では、CMOSイメージセンサーにどんな魅力を感じて、高みを目指し続けるのか。もともと大手メーカーの半導体技術者だったという青山氏に聞いてみた。「イメージセンサーは数あるセンサーの中でも、人間の視覚と同様、得られる情報量が圧倒的に多いことが魅力。自分で作ったものの結果が、目に見えるのも面白いところですね。またアナログ技術のかたまりのようなデバイスなので、特にニッチで高性能なニーズに応えるには、技術やノウハウの相当な蓄積が必要です。高い理想に向かって蓄積すればするほど競争力を高めることができます」(青山氏)。
しかしイメージセンサーの性能を高めるプロセスは、ノイズとの地道な戦いなのだそうだ。「ノイズはあらゆるものに含まれる不確定な値。それを抑えるのはとても難しいし、我慢強くやり続けなければ成果は出ません。イメージセンサーの低ノイズ化には、われわれがチャレンジしてきたノウハウが詰まっているのです」と青山氏は話す。
そんなデバイスの面白さと、同社の技術に魅せられ「(浜松の地に)単身赴任をしてでもここで働きたい」と言ってくれる人もいるそうだ。「われわれは『ニッチなニーズに応えられる会社はここしかない』と言われるようにならなければいけない。これまで誰もできなかったことができる会社だと思っています」(青山氏)。
浜松は、1926年に高柳健次郎氏が世界で初めてブラウン管に「イ」の文字を映し出すことに成功した“テレビ発祥の地”。ブルックマンテクノロジは、日本のテレビ放送が産声を上げた浜松で、CMOSイメージセンサーの高い理想と可能性を追求し続ける、オンリーワン企業だった。
杉本恭子(すぎもと きょうこ)
東京都大田区出身。
短大で幼児教育を学んだ後、人形劇団付属の養成所に入所。「表現する」「伝える」「構成する」ことを学ぶ。その後、コンピュータソフトウェアのプログラマ、テクニカルサポートを経て、外資系企業のマーケティング部に在籍。退職後、フリーランスとして、中小企業のマーケティング支援や業務プロセス改善支援に従事。現在、マーケティングや支援活動の経験を生かして、インタビュー、ライティング、企画などを中心に活動。
(取材協力:マイナビ)
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