クレイドルの体制は今後も変わらず、MSCの構造/機構/音響の連成機能強化を計画CAEニュース

エムエスシーソフトウェアの日本法人が国産CFDベンダーのソフトウェアクレイドルのM&Aに関して、現状と今後の計画について明かした。

» 2017年02月01日 10時30分 公開
[小林由美MONOist]

 エムエスシーソフトウェア(日本法人)は2016年12月に国産CFDベンダーのソフトウェアクレイドル(以下クレイドル)が米MSC Softwareのグループ企業になったと発表した。エムエスシーソフトウェアの日本法人は、本件が吸収を目的としていないことを強調し、クレイドルが今後も独立した企業として存続していくことを明かした。現在のクレイドルの体制は変更なく、現代表取締役社長の久芳将之氏も継続して同職を続ける(関連記事:米MSC、国産CFDソフトベンダー クレイドルを買収)。

 MSCはクレイドル以前には、FFT(Free Field Technologies)、e-Xstream engineering、simufact engineeringといった企業をMSC傘下に加えてきたが、今も独立してビジネスを展開し、3社の従業員は大幅に削減されることなく、かつ創立者ら経営コアメンバーも今もなお在籍中。売り上げ、人員ともに増加し続けているということだ。

 これは「アンカーテナントモデル」という、米MSCの現CEOであるドミニク・ガレロ氏が唱えるビジネス方針だという。「MSCというショッピングモールの中に、クレイドルやFFTといった専門店が立ち並ぶイメージ」とエムエスシーソフトウェア 代表取締役社長 加藤毅彦氏は説明する。傘下企業らは今もなお、社名や製品名、ロゴ、Webサイト、マーケティングといった、ブランド・アイデンティティーの要素をそのまま維持し続けているという。

 従来のM&Aでよくあったような、企業を完全に吸収するようなモデルでは企業が持つ能力や才能が十分に発揮できないとガレロ氏と加藤氏は共に考えているという。M&Aというと、特に昨今の日本ではネガティブなイメージでとらえられがちであるが、「今回の件はポジティブなもの。クレイドルの業績が落ちていたということはなく、むしろ好調であった」と加藤氏は強調した。

 「クレイドルはグローバル展開をもっと強化していこうという時期だった。MSCは同社の株主として、その部分を支援していくと共に、資本投入して研究開発をもっと強化し、より競争力の高い製品を市場投入できるようにしていく」(加藤氏)。過去に傘下に加った3社についても同様の状況であったが、現在、いずれも市場拡大に成功し、業績を大きく伸ばしたということだ。

 なおクレイドル製品「SC FLOW」については2017年中にMSC製品との連携を強化していく計画だ。「クレイドルのCFDソフトウェアは非常に性能が安定しており、並列処理の性能も優れている」と加藤氏は述べる。MSCが以前から取り組む複合領域解析にも適しており、「ADAMS」や「Marc」といったMSC製品との連携強化を図ることで高度な解析システムが提供できるとしている。特に、近年ユーザーからのニーズが高いという構造/機構/音響の連成機能を強化する。

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