優勝したのは、東海大学の「Devers」による「スマートフォンで本物の魚を釣る!オンライン釣りシステム」である。
スマホで釣りをするゲームはこれまでも提供されてきたが、このシステムは遠隔地にある釣竿を使った実際の釣りをスマホ経由で実現する。
遠隔地の釣り場には、竿を設置する人が必要であり、釣れた場合にも魚を外し、発送するなど人の介入が必要である。
なんだか、スマートでない感じがするシステムである。しかし、プレゼンを聞き進むとこのスマートでないシステムでもワクワクを感じさせてくれた。
まずは体験である。魚が食いついた感触のフィードバックがスマホにあり、いいタイミングで引き上げると、遠隔地の釣竿も遅延がほとんどなく制御できる。このヒットの瞬間はビデオ撮影されており、釣りの成果として記録され、何度も再生したり、シェアしたりすることも可能である。
そして重要なのはビジネスモデルである。釣りを趣味とする人は年々減少傾向にあり、釣り堀や釣り関連のビジネスにとって現状打破は最大の課題となっている。
審査員のコメントでは最近、釣果記録アプリを提供するスタートアップが数千万円の調達を得たとのこと。釣り関係のビジネスはグローバルに見れば人口も多いという。スマホで釣りをするという一見、おふざけなウケを狙ったシステムだが、そこで得られる体験とビジネスが連動するとブレークする可能性を感じさせてくれる。
IoTを使ったソリューションは世の中的に出切った感がある。そんな状況下でも、このようなコンテストで注目を集め評価されるには奇抜な発想やデザイン力が求められる。
審査員の質疑応答への対応で気になった点があった。
多くのチームはビジネスモデルという名の金もうけ方法をキチンと説明できない。もしくは発想が限定的であった。
Device2Cloudコンテストは、技術とビジネスをバランス良く身につけた若手エンジニアの育成が狙いであるが、ビジネスについてはまだまだなようである。
エントリーした学生のほとんどが工学系の学生であったので仕方ないかもしれないが、ビジネスの観点がなければ、優れた技術も社会で貢献することはできない。今後の開発では、近江商人の言葉として伝えられている「売り手よし、買い手よし、世間よし」という「三方よし」を考えることも忘れないで欲しいと願う。
このコンテストは、IoTの普及と共にハードルが高くなっているかもしれない。しかし、最新のテクノロジーを学生がどのように料理してくるか楽しみである。特に画像処理・認識系が期待される。今回の作品でもクルマのナンバーを認識するシステムや、人の笑顔度を判断しそれに適した音楽を流すなどシステムが提案されていた。
表彰式後、審査委員長を務める広島工業大学教授の長坂康史氏が2017年も開催すると宣言していた。
今回優勝したチームのように楽しいシステムを、また準優勝チームのようにデザイン良く身近で便利なシステムを、2017年も期待したい。
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