車載システムの開発に不可欠なものとなっているHILSについて解説する本連載。今回はエンジンの負荷となる発電機のプラントモデルを検討するとともに、これまで2回にわたって説明してきたエンジンのプラントモデルと組み合わせることを考えます。
前々回、前回の2回にわたってエンジン側のプラントモデルを考えましたが、エンジンプラントモデルだけではECUをテストすることはできません。エンジンの負荷となる発電機のプラントモデルが必要です。両者を組み合わせてシステムを完結させることによってテストが可能となります。
ここまで発電機については細かく定義していませんでしたので、あらためてエンジンECUのテスト用HILSのプラントモデルの一部として、発電機の要件を考えてみます。発電機の仕様を表1にまとめました。
50Hz出力時 | 60Hz出力時 | |
---|---|---|
電圧(実効値) | 100V | 100V |
周波数(単相交流) | 50Hz | 60Hz |
回転数 | 3000rpm | 3600rpm |
発電機出力 | 10kW | 10kW |
表1 発電機の仕様(注:電圧は特に断らない限り実効値とします) |
発電機モデルを考える前提は、前々回の連載第5回の「図2 発電機システムのプラントモデルのイメージ」における発電機の機能です。
同図は、エンジンに注目していたので、発電機部分を1つのブロックで簡単に表現していましたが、発電機部分に注目して詳細を追加すると図1のようなイメージとなります。
発電機は、モーターと同様に直流発電機、同期発電機、誘導発電機などいろいろな形式があります。形式ごとに、設計によりさらに多くの種類に分けられます。発電機の基本的な機能は、一定電圧、一定周波数で必要とされる電流をゼロから定格電流まで出力することです。発電機のECUをテストする場合には、電流制御に対応する動作を回転角1度単位で実現する必要があり、電気、磁気、力学に基づく詳細な物理モデルを適用し、容量成分や誘導成分を含む負荷に対して適切に動作する必要があります。
一方、本HILSで必要とするのは、発電機を駆動するエンジンのECUをテストするためのプラントモデルです。その中で発電機のプラントモデルは、エンジンの機械的な負荷として、力学的な機能を満足すれば十分で、電気的、磁気的に厳密に作動する必要はありません。
そこで本HILSでは、単純な抵抗を負荷とし、出力電流に応じてトルクを吸収する発電機プラントモデルを考えることにします。
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