ホンダは、民生機器テクノロジーの展示会「CES 2017」において、二輪車を転倒させないアシスト技術「Honda Riding Assist」の実験車両を世界初公開した。
ホンダは2017年1月5日(現地時間)、民生機器テクノロジーの展示会「CES 2017」(2017年1月5〜8日、米国ネバダ州ラスベガス)において、二輪車を転倒させないアシスト技術「Honda Riding Assist」の実験車両を世界初公開した。
フロントフォークの角度(キャスター角)を可変にした前輪と、モーターによる操舵のアシストで、二輪車が不安定になる低速域や停止時のバランスを保つ。渋滞や信号待ちでのストレスを軽減する。キャスター角はスポーツ走行まで対応して調整でき、既存モデルと同等の操縦性も両立している。
製品化時期は未定だが、アシストに必要な機構をフロント側に集約することで、既存モデルにも技術を展開しやすくした。
Honda Riding Assistは、ASIMOやUNI-CUBで培ったロボティクス技術を応用して、車両単独でも自立するようにした。ライダーが少しバランスを崩しても車両でバランスを保つことでふらつきや取り回し時の転倒を防ぐ。低速域で車両が不安定になることによるストレスを低減し、ツーリングや二輪車のある生活をより楽しんでもらう狙いがある。
二輪車は、中高速域では車輪からの慣性モーメントが十分に確保されているが、渋滞や信号待ちなど低速域になると不安定になり、ライダーが自身でバランスをとる必要がある。これに対し、ジャイロスコープに頼らず、ステアバイワイヤとモーターによる操舵の微調整で横方向のバランスをとり、キャスター角を調整して直進安定性を高める「Variable Slant angle system」を組み合わせて転倒を防ぐ。
キャスター角は直進安定性とハンドリング性能に影響する。キャスター角が垂直に近いほど、操舵がしやすくスポーツ走行にも向くが、低速域では直進安定性に欠ける。一方、キャスター角が大きくフロントフォークが寝ているほど、低速でも直進安定性が増すが操舵性に欠ける。
Honda Riding Assistでは、速度に応じてキャスター角を制御することで直進安定性とハンドリング性能を両立する。時速4km以下の低速時にキャスター角と操舵を車両で制御することにより、直進安定性と左右方向のバランスを確保する。キャスター角は手動でも調整できるようだ。
一定の速度域で走行中はアシストを行わない。フロントフォークを立てることで取り回しを良くする。
車両の購入後にフロントフォークの長さを変更するチューニングや、フレームとフォークの取り付け角を調整できるようにする後付け用パーツなどは市場に出ている。しかし、「二輪車メーカーとしてキャスター角を可変にしたモデルを投入する例はないだろう」(ホンダ)。
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