第4次産業革命の真の幕開けとなる2017年、カギを握るIoTプラットフォームMONOist 2017年展望(2/3 ページ)

» 2017年01月05日 15時00分 公開
[三島一孝MONOist]

雨後のタケノコのようなIoTプラットフォーム

 2016年は製造業向けに限った話ではないが、雨後のタケノコのように数多くのIoTプラットフォームが発表された。2017年もこの動きは加速することは間違いない。多くの製造業にとってIoTを活用するのに実証の成果に基づいたベストプラクティスに対するニーズは高いため、実効性の高いIoTプラットフォームは価値を持つ。

 ただ、こうした動きには気を付けるべき点がある。現状のIoTプラットフォームはそれぞれが指す対象範囲が異なっているという点と、現状で1つのIoTプラットフォームを採用すれば全てが事足りるという状況にはなっていないという点である。

 「IoTプラットフォーム」は、現状ではその名前が指すような「IoTで得られる成果に対する基盤」にはなり得ていない。今実現できていることは、異種システム間、異種組織間、異種データ間の連携を部分的に代替でき、個々のシステム導入を行うことを軽減できる仕組みと言い換えることができる。IoTを活用するのに必要なシステムやハードウェア、ソフトウェア、ノウハウの注入などのいくつかを1つのパッケージにして「異種環境を飛び越えることを可能にするもの」ともいえるだろう。

 そのため、製造業を含むユーザー企業として注意しなければならないのが「どの領域を賄うIoTプラットフォームなのか」という点である。そして導入の際には各種のIoTプラットフォームをどのように組み合わせて導入し、どの領域は自社で行うのかという点を考えなければならない。

photo IoTによるバリューチェーンの変化(クリックで拡大)出典:経済産業省

水平統合における「設計軸」と「生産軸」

 IoTを活用するための異種環境の連携としては、バリューチェーンや工程の流れに合わせたシステムの統合を実現する水平方向の連携と、企業としての製造現場から経営レベルまでのシステムを結ぶ垂直方向の連携が必要とされている。IoTプラットフォームの考え方としてもこうした水平間のアプリケーション統合の動きと、垂直間の企業内システムの連携の動きが生まれている。

 製造業における水平方向の連携の一例として、PLM(プロダクトライフサイクルマネジメント)システムの拡大なども進んでいる。IoTプラットフォームという名称はついていないが、製造業が作るモノの情報をPLMを軸に一元化し、エンジニアリングプラットフォームを作る動きだ。大手CADベンダーであるフランスのダッソーシステムズや、ドイツのシーメンス(シーメンスPLMソフトウェア)、米国PTCなどは全てエンジニアリング情報を一元化するプラットフォーム構築の動きを示しつつある。作る製品がIoT化すれば、製品を販売した後のユーザーの使用情報が常に取得できるようになり、アフターサービスとの連携や設計の高度化などが実現できるためである。

 ただ、IoTプラットフォームとしての水平統合の動きは必ずしもCADベンダーが提示する「設計」を軸として進むかどうかは分からない。生産を軸として考えた場合、MES(製造実行システム)とERP(エンタープライズリソースプランニング、業務基幹システム)を軸に拡大させプラットフォーム化するという考え方もあるためだ。生産については経営的付加価値が失われたという話もあるが、製造業であるからにはどこかで生産のプロセスを経由し、そこにはあらゆる情報が集約されるために軸を置くという考え方となる。

 いずれにしても設計軸、生産軸のどちらの場合でも現実的には個々のシステムが分断されている状況が存在し、これらを連携させる動きは2017年も広がりを見せる。

photo 「自律的な生産現場(スマートファクトリー)」を実現するために必要なシステム連携のイメージ(クリックで拡大)出典:ベッコフオートメーション

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