マイドクターウォッチは、セコムがパートナー企業との協力によって開発した。セコム 執行役員技術開発本部長 兼 開発センター長の進藤健輔氏は開発の背景について「現在、さまざまな健康管理機器があるが、それぞれが示すバイタルサインをきちんと理解して活用できているわけではない。マイドクターウォッチのようなウェアラブル端末を装着することで、バイタルサインを自動収集、データセンターで一括管理し、人工知能(AI)で解析し適切なアドバイスを行えば、そういった問題を解決できる。また救急対応機能も、これまでは自分で操作する必要があったが、ウェアラブル端末によって、操作できないような事態にも自動で救急通報できるようになると考えた」と説明する。
マイドクターウォッチのウェアラブル端末の外観は典型的なリストバンド型だ。有機ELディスプレイに時計、歩数、カロリーなどを表示し、ユーザーインタフェースとして、自ら救急通報する際の救急ボタン、画面操作のためのタッチスイッチ、バイブレータ、充電LEDなどが組み込まれている。センサーとしては、歩数や消費カロリーを計測するための加速度センサーと、装着しているかどうかを見分ける静電容量センサーを搭載。無線通信は、Bluetooth Low Energyとセキュリティ向けの特定小電力無線通信を利用可能だ。スマートフォンとの連携はBluetooth Low Energyを、ホーム端末との連携は特定小電力無線通信を使うことになる。
これだけ多機能にもかかわらず10日間程度の連続稼働時間を確保した。充電は専用のクレードルの上に置くだけでよく(ワイヤレス充電)、30分間ほど充電すれば満充電になる。IPX7相当の防水機能も有しているので、入浴時に装着したままでも利用できる。主なユーザーとして想定している高齢者の場合、自宅の転倒事故は浴室内で起こりやすいといわれてることを考えると、防水機能は極めて重要だ。
また正式サービス開始後は、体組成計や血圧計、体温計といった各種健康管理機器とマイドクターウォッチの端末の連携も予定している。Continuaに準拠するヘルスケア機器はBluetooth通信機能を有しているので、これは比較的容易に実現できそうだ。
進藤氏は今後のウェアラブル端末開発の方向性として「脈波や酸素飽和度、血圧、体温、血糖などを計測できる生体センサーを搭載し、端末本体で健康状態をモニタリングできるようにしたい。また、生体認証機能なども検討対象になる」と述べている。
中山氏によれば「2016年から当社はオープンイノベーションに注力している。パートナー企業と共同開発したマイドクターウォッチはその成果の1つ」だという。マイドクターウォッチそのものは、典型的なリストバンド型ウェアラブル端末なので、既製品を利用するという選択もあったはずだ。しかし、オープンイノベーションとはいえ自社開発にこだわったのは「セコムが提供したいサービスに最適な端末をタイムリーに届けたい」(進藤氏)からに他ならない。
マイドクターウォッチの端末はサービス利用者に配布するものであり、有償で販売するモノ売りの製品ではない。セコムが今後、さらに高機能な端末と対応サービスを開発した場合には、サービス利用者は端末を交換するだけでよい。
117万4000件の加入数を誇るセコム・ホームセキュリティをベースとするマイドクターウォッチは、なかなか普及が進まないウェアラブルヘルスケアの本命となるかもしれない。
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