重合反応を起こした後のポリイソプレンの構造には、シス、トランス、ビニルの3つがあり、トランスやビニルだとゴムではなくプラスチックになってしまう。シス構造の比率を高めることがゴムとして利用する必須条件となる。天然ゴムの場合でシス構造の比率がほぼ100%だ。
従来のポリイソプレンゴムはシス構造の割合が94.0〜98.5%で、天然ゴムの代替とするには性能として至らなかった。また、シス構造の比率を上げるための構造の制御も困難だった。
今回、ガドリニウム触媒の構造を見直すことにより、40℃以上でもポリイソプレンゴムの構造を制御することができるようになった。シス構造の比率は99.0〜99.9%で、ゴムの性能としては天然ゴムに匹敵する。シス構造が最適な長さとなるように分子量をコントロールしており、分子量のばらつきを抑えている。イソプレンからポリイソプレンを合成する効率も従来のガドリニウム触媒の600倍まで向上できた。
ガドリニウム触媒で合成したポリイソプレンゴムでタイヤ材料を作成し、性能評価を行ったところ、耐破壊物性と燃費性能において、天然ゴムを上回る良好な結果だったという。製品化の目標は2020年代としているが「用途は未定だ。天然ゴムは全てのタイヤで使われるので、乗用車用に限らず可能性は広がっている」(迎氏)。
また、今回発表した合成ゴムについては、競合他社との差別化につなげるのではなく、必要であれば業界全体で共有して活用していきたいとしている。今後は、調達先とガドリニウム触媒を使った合成ゴムの生産について協力を仰ぎながら量産体制を整える。
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